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AI契約書レビューはどこまで使える? 法務SaaS完全理解マニュアル LegalForce&GVA assist編リーガルテック最前線(1/3 ページ)

» 2022年12月22日 09時00分 公開
[武内俊介ITmedia]

 バックオフィスの中でもデジタル化が遅れていた法務部門。コロナ禍において、脱ハンコやリモートワークの動きが急激に加速したこともあって、近年リーガルテックと呼ばれる法務関連SaaSが盛り上がりを見せている。

 前回の電子契約に続き、今回はAI契約書レビューについて取り上げる。6月にグレーゾーン解消制度においてAI契約書レビューシステムに関して「違法の可能性がある」という見解が示されたことを受け、一部報道においてはまるでリーガルテックそのものが弁護士法72条(弁護士でない者が弁護士の業務をする行為、いわゆる非弁行為を禁止する条文)違反であるかのような伝え方がなされた。

 多くの人がリーガルテックに対する漠然とした不安を掻き立てられることになったが、多くの誤解を含んでいる。この点も今回解説していく。

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AI契約書レビュー

 AI契約書レビューは、アップロードされた契約書の文書データをAIがチェックし、リスクがあるカ所などを抽出した上で、修正案などを提示してくれるツールである。企業法務においては、NDAや業務委託契約書は雛形を用いることも多く、雛形との差異を一瞬で比較検討してくれるため、業務の効率化に貢献することが期待されている。

契約書をチェックしてくれるサービスが「AI契約書レビュー」(画面はLegalForce)

 一方で、現段階ではAIが正しい契約書を作成してくれる、というものではなく、監修する法律事務所が作成した雛形との差異を洗い出し、修正案を提示してくれるのみだ。グレーゾーン解消制度において「違法の可能性がある」という指摘がされたが、それはAI契約書レビューツールが弁護士法は72条に抵触しているかどうかではなく、Web広告などで繰り返し「これを導入すれば顧問弁護士が不要になる」などと誤認させるような誘導をしたからではないだろうか。

 雛形に少し修正を加えただけの契約書であっても、隅から隅まで法務担当者や顧問弁護士がチェックしなければならない状態に比べると、法務部門の業務を遥かに効率化できることは間違いない。ただし、あくまでも事前に登録されている雛形との差異を指摘するだけに過ぎず、人間の法務担当者の業務の一部を補完するものである。

 差異の抽出やリスクの洗い出し、例文の提示などは人間よりもAIの方が得意な分野であることは間違いないが、過度な期待を抱かずに、あくまでも法務業務の効率化や社内のリーガルチェックの早期化のために導入するかどうかを検討するべきものである点には注意が必要だ。

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