バックオフィスの中でもデジタル化が遅れていた法務部門。コロナ禍において、脱ハンコやリモートワークの動きが急激に加速したこともあって、近年リーガルテックと呼ばれる法務関連SaaSが盛り上がりを見せている。
ただし一口に「リーガルテック」と言っても、契約書の作成からレビュー、電子契約、そして保管など対応範囲は広く、それぞれの業務に特化したSaaSが次々と生まれている。
今回は電子契約、AI契約書レビュー、契約書の作成と管理の3つの分野で各2つ、合計6つのSaaSを取り上げる。
当社では企業のビジネストレンドを明らかにするために読者調査を行っております。本アンケートのテーマは「法務SaaS」に関する読者調査です。ご回答いただきました方の中から抽選で10名の方にAmazonギフトカード(5000円分)をプレゼントいたします。ご協力賜りますようお願い致します。
リーガルテックの対象範囲は法務という分野に特化している一方で、作成、レビュー、契約などの業務プロセス全てを完璧にカバーしているSaaSは存在しないため、本稿ではまずは各分野における比較を通じて機能や思想を掘り下げた上で、リーガルテック全体の整理を行っていく。
また、2022年6月にグレーゾーン解消制度においてAI契約書レビューシステムに関して「違法の可能性がある」という見解が示されたことを受け、一部報道においてはまるでリーガルテックそのものが弁護士法72条(弁護士でない者が弁護士の業務をする行為、いわゆる非弁行為を禁止する条文)違反であるかのような伝え方がなされた。多くの人がリーガルテックに対する漠然とした不安を掻き立てられることになったが、多くの誤解を含んでおり、本稿を読んでいただければ問題の所在やリーガルテックの可能性を理解していただけるはずだ。
日本においてリーガルテックが最初に発展したのは電子契約である。コロナ禍における脱ハンコの議論の遥か前から、日本のハンコ絶対主義が多くの非効率を生んでいた。年末調整の書類に押すためだけにハンコを作らされた外国人労働者の話や、役所の書類提出時にハンコが必須だと言われ、売店で三文判を買って押すことになった話など、形式主義の象徴がまさにハンコである。
企業間の契約書においても、2通を製本し、それぞれが捺印して一通ずつを保管するということが当たり前とされてきた。金額の大きな譲渡契約書や代理店契約書などであれば、複雑な交渉を経て、最後の最後の儀式として重々しく契約書を取り交わすことは理解できなくもない。しかし締結頻度が高く、ほとんどが定型文対応となるNDA(秘密保持契約書)や業務委託契約書も含めて全ての契約処理にも原本主義が適用されており、法務の業務効率を上げることは難しかった。
紙の契約書は、プリントアウトして製本し、郵送し、捺印し、返送し、保管する必要がある。また印紙を貼る必要があるケースもあり、多くの手間と時間と費用がかかっていた。
なりすましや改ざんの可能性から「原本の方が安心」という意見があるのも理解はできるが、本来はリスクとコストとのバランスによって合理的に判断されるべきものである。テクノロジーの発展により、ビジネス上のコミュニケーションが電子メールやチャットに移っていく中で、旧態然として非効率の塊だった契約処理の電子化が望まれるのは必然だったのである。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR