DocuSignは米国に本社を置くDocuSign社が03年から提供するサービスであり、世界ナンバーワンの電子契約サービスである。ハンコ文化が根強かった日本とは違い、電子契約が早くから普及していた米国では電子契約といえばDocuSignであり、SalesforceなどのさまざまなSaaSとの連携も豊富で、もはやビジネスインフラの一つと言っても過言ではない。
日本では外資系企業以外では導入がなかなか進まなかったが、コロナ禍を経て電子契約が一気に普及したこともあり、少しずつ導入が進んでいる。電子契約をする、という部分においては他のサービスと大きな差異はないが、DocuSignの強みはそれ以外の機能にある。
1つ目は、PDFだけでなくWordやGoogleドキュメントなどの文書作成ソフトで作成したものをそのままアップロードできることだ。クラウドサインをはじめ、ほとんどの電子契約サービスはPDF形式でしかアップロードができないため、利用企業は文書作成ソフトで作った契約書の確定版をPDFに変換する必要がある。ちょっとした手間に思えるが、大量の契約書を処理する規模の大きい組織では負担が大きいため、日本でも大企業からはこの点が支持されている。
2つ目は、契約当事者が入力する機能が豊富なことである。他の電子契約サービスもPDF上に住所や名前などのちょっとした文字を入力できる機能を提供しているが、フォントや文字サイズが変更できず、あくまでも補助機能に過ぎない。DocuSignの場合はかなり細かい設定が可能であるため、相手方にきちんと入力してもらう必要がある契約書についても、ストレスなく作成することができる。また、入力フォームを用意し、そこで入力された内容を契約書上に落とし込んで作成するということも可能だ。契約書の締結はデジタル上で行われるのが当たり前になった前提で、その入力部分の利便性を高めている。
3つ目は、外部連携の豊富さである。DocuSignはナンバーワンの電子契約サービスであり、さまざまなSaaSとの連携が用意されている。例えば、Salesforceとの連携においては、契約段階まで進んだ商談の情報(会社名、住所、契約期間、金額など)をボタン1つでDocuSignに連携し、そのまま契約に進めることができる。別途契約書を作成する手間もなく、内容をチェックする必要もない。SFAからシームレスに契約書締結まで完結させることができるのは、豊富なAPIがあってこそだ。
このようにDocuSignの機能は、電子契約をすることを前提とした上で、いかにストレスなくスムーズに契約書を作成し、締結するかという部分を意識している。締結後の書類を社内で誰に共有するかといったことも柔軟に管理できる。ようやく脱ハンコに動き出した日本の各サービスとの差異はここにある。
一方で機能が多すぎるため、使いこなすためには相応のITリテラシーを必要とする。日本企業が最初に導入する電子契約サービスとしてはオススメしないが、電子契約を前提とした上で法務周りの業務プロセスを再構築する際には検討に値するサービスである。
次回は「AI契約書レビュー」についてお届けする。
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