一緒に展示されている「鎖国ブラウザ」は、ハッカーがよく利用する「Man in the Middle攻撃」(中間者攻撃)を参考に、インターネット上の情報とWebブラウザの利用者の間にアーティストが介入して特定のWebページを見せなくしたり、参照しようとしているWikipediaの情報を一部改変して表示したりすることが可能であることを体験してもらうためのもの。
「鎖国[WALLED GARDEN]」プロジェクトでは、これらの作品を体験してもらった19歳から64歳までの男女30人に参加してもらい「私はネットでできている?」というワークショップを開催。そのダイジェスト映像も展示されている。
「鎖国ブラウザ」などの作品の制作に当たっては、既存のテクノロジーについて批評的な啓発を行ってきたアーティスト集団「The Critical Engineering Working Group」(ザ・クリティカル・エンジニアリング・ワーキング・グループ)が大きな影響を与えたという。
今回、YCAMではプロジェクトの集大成ともいえる展示のために、このザ・クリティカル・エンジニアリング・ワーキング・グループの共同創設者の一人、ダーニャ・バシリエフ氏と、メンバーでハッカーでありアーティストでもあるベンクト・ショーレン氏を招聘(しょうへい)。
「エンジニアリングとは、人間が動き、伝え、考える方法をつくる言語です。現代において最も変革的な力をもつこの言語について、学び、活用し、その影響を明らかにしていくこと。これが私たち、クリティカル・エンジニアの仕事です」──で始まる合計11項目からなる「The Critical Engineering Manifesto」(ザ・クリティカル・エンジニアリング・マニフェスト)の全文を日本語訳して展示している。
さらに同グループの代表作の一つでもある「Unintended Emission」(アンインテンデッド・エミッション)も展示している。
この作品は、スマートフォンやパソコンが、可能な限りWi-Fiに接続しようとする仕組みを逆手に取り、来場者が日頃接続しているWi-Fiアクセスポイントの名前や位置の情報を地図上に展開して公開してしまう作品。機器が探していたアクセスポイントと、世界中の人々が収集したアクセスポイント情報を地図にまとめた「Wigle.net」のデータベースと照らし合わせることで、その人が普段どこにいるのかもおおよその見当がついてしまうのだという。
最新のスマートフォンOSなどでは、プライバシーに配慮してこうした情報が秘匿されうまく表示されないことも増えたというが、それでも会場の大型ディスプレイにはたくさんの店名や施設名のアクセスポイント名が映し出されていた。
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