ITmedia NEWS > 科学・テクノロジー >

巨大化した“口”や“目”だけをWeb会議で表示するとどうなる? 神戸大が調査Innovative Tech

» 2023年01月06日 08時00分 公開
[山下裕毅ITmedia]

Innovative Tech:

このコーナーでは、テクノロジーの最新研究を紹介するWebメディア「Seamless」を主宰する山下裕毅氏が執筆。新規性の高い科学論文を山下氏がピックアップし、解説する。

 神戸大学塚本・寺田研究室に所属する研究者らが発表した論文「FaceShow: 顔の部分表示による遠隔会議支援システム」は、ビデオ会議において、目や口といった顔の一部分だけを表示した際の影響を調査した研究報告である。顔は表示したくないがコミュニケーションの質を低下させたくない、そんな解決策として顔の部分表示を提案する。

ビデオ会議において、口だけもしくは目だけを表示する

 ビデオ会議が多くなった昨今、顔を表示したくない人も多いだろう。過去の調査でもWebカメラをオンにすることに抵抗を感じる人が多数を占めている。一方で、音声のみに比べて顔を見て話すビデオ通話の方がコミュニケーションの質が高いことが報告されている。カメラのオンにもオフにも利点と欠点が存在するわけだ。

 そこでこの研究では、ビデオ会議参加者の目や口など顔の一部のみを表示する遠隔会議支援システム「FaceShow」を提案する。顔の一部表示により匿名性を確保することで顔出しへの抵抗を低減できるだけでなく、お互いのリアクションを得られてコミュニケーションの質の低下が抑えられる。

 システムでは、Webカメラから映像を取り込み、目や口の部位を抽出、その部位を強調させるため拡大し、その他の顔は透過処理を行う。このような画像処理を行い、仮想カメラ機能を用いて遠隔会議アプリケーションに部位のみが映った映像を反映する。その際、その場で口がパクパク動くのではなく、顔の動きと連動して口の位置も動くようにしたため、うなずきといったリアクションも反映可能である。

 実験では、「口だけ表示」「目だけ表示」「アバター表示」「通常の顔表示」で実施し、評価した。

「口だけ表示」でビデオ会議をしている様子
「目だけ表示」でビデオ会議を行っている様子
「異なるアバター表示」でビデオ会議している様

 アンケート結果では、「口だけ表示」「目だけ表示」「アバター表示」は匿名性が高い結果が得られた。だが、話がやや把握しづらい傾向が見られた。

 「口だけ表示」に恥ずかしさを感じる参加者が多かった。歯並びや唇が拡大表示されるため、口元のコンプレックスを抱えている場合は抵抗を感じてしまうと考えられる。また口だけの表示は、自分の感情を相手に察知されやすくなるため、恥ずかしく感じてしまう可能性も考えられる。

 その一方で、口だけの表示は笑顔が伝わりやすいという利点が確認された。通常よりも微小な口元の変化に気が付きやすいため、相手の笑顔を認知しやすく、結果として場のリラックスした雰囲気を作り出す手助けになっていると考えられる。

 口とは反対に、「目だけ表示」は恥ずかしくない参加者が多かった。目元のコンプレックスを持つ人は少なく、目のみでは自身の感情が相手に察知されにくいことなどが考えられる。

Source and Image Credits: 岸本 諒大, 土田 修平, 寺田 努, 塚本 昌彦. FaceShow: 顔の部分表示による遠隔会議支援システム. WISS2022



Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.