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日本を画像生成AIで再現する 「自分の見た景色」を学習したAIは強力な思い出再生装置に清水亮の「世界を変えるAI」(2/3 ページ)

» 2023年01月20日 16時00分 公開
[清水 亮ITmedia]

 いざ「AIに見せる写真」として捉え、カメラを持って街に出てみると、実は日本にしかない景色というのは相当数ある。仲間で手分けして撮影に挑み、夢中でシャッターを押していると、一週間ほどで数千枚の画像が集まった。AIでありながら、欲しい結果を得るためには街にでなければならないという錯誤が面白いところだ。

AIに学習させるために筆者らが撮影した郵便ポストや郵便局

 これをNVIDIAの「A100チップ」搭載VGAボードを8枚搭載したコンピュータに学習させるわけだが、そのままではうまく学習できない。

 まず、学習に先立って、全ての画像に対してBLIPというアルゴリズムでキャプションを自動生成する必要がある。これに独自のアルゴリズムを加えて効率的なキャプションを生成していく。

 キャプションの自動生成に数時間かかり、生成されたキャプションに基づいてStableDiffusionを微調整(ファインチューニング)するのにさらに一日半ほどかけた結果、「救急車」でこのような画像が生成できるようになった。

救急車の形はまだ欧米っぽいが、色は日本っぽくなった

 これだと正直、まだ海外の救急車のイメージに引っ張られている。日本の救急車は基本的には「ハイエース」のような丸みを帯びたものだ。画像は、カラーリングは日本の白と赤の救急車に近づいているが、形は海外の角ばった救急車だ。

 郵便局も、アメリカ式の青いイメージから赤いイメージへの転換に成功した。

郵便局も日本でよく見かける雰囲気に

 自動販売機はかなりうまく行った。

日本の自動販売機を学習させると、StableDiffusionはこういう絵を出力できるようになる
とても日本らしい自動販売機だ

 駐車場もちゃんと日本風にコンバートできた。

駐車場も狭い日本の駐車場を再現できるようになった
よく見る日本の駐車場風景になった

 ただ、このデータも筆者が在住する東京23区の中心部、特に千代田区と新宿区に偏っているという欠点がある。大阪でデータを撮ればおそらく大阪っぽい色が出るはずだ。例えば筆者の出身地である長岡市では、郵便局はビルではなく単独の建物だった。

 AIはこのように学習したデータによるバイアスを非常に強く受ける傾向がある。

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