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携帯非常時の事業者間ローミングいつ実現? 対応方法によってはMVNO危機も房野麻子「モバイル新時代」(1/2 ページ)

» 2023年01月20日 11時27分 公開
[房野麻子ITmedia]

 2022年にモバイル業界を騒がせた出来事の1つに、KDDIの通信障害がある。7月2日から約3日間、au 、UQ mobile、povoの回線がつながりにくくなり、金融機関や配送業務、一部の緊急通報が遅れるなど大きな影響があった。

 この通信障害を契機に総務省が立ち上げたのが「非常時における事業者間ローミング等に関する検討会」だ。自然災害や通信障害などの非常時に、臨時的に他事業者のネットワークを利用する事業者間ローミングによって、通信サービスを利用できる環境を整備することを目的としたものだ。22年中に6回の会合が行われ、12月に第1次報告書が公表された。

非常時に基地局などが被災して通信ができなくなった場合に、被災を免れた他事業者の基地局を利用して通信する(第1次報告書より。以下同)

 報告書では基本方針として、携帯電話事業者は、「一般の通話やデータ通信、緊急通報機関からの呼び返しが可能なフルローミング方式」による事業者間ローミングをできる限り早期に導入することとされている。

検討会は、緊急通報機関からの呼び返しが可能なフルローミング方式の導入を提言。

 フルローミングの対応は、検討会で警察や消防、海上保安庁の緊急通報受理機関が、通報者に折り返し電話ができる「呼び返し」の重要性を強調したことや、フルローミングを要望する有識者が多かったことが背景にある。

 しかし、呼び返しするためには、携帯電話事業者の加入者データベース(HSS)を参照する必要がある。基地局のアンテナが被害にあって障害が起こったような場合は、他事業者のネットワークを利用してそれも可能だが、KDDIの通信障害のように、HSSやその近くで障害が起こった場合にはローミングできないことになる。

 第5回の検討会でチップベンダーの立場として出席したクアルコムからは、フルローミングに対応する場合、「対応のために大きな変更が必要な場合は、ソフト開発に時間がかかり、対応ソフトを市場へ出すには数年を要する」という見通しも示された。非常時における事業者間ローミングをフルローミングで実現するには、少し時間がかかりそうだ。

 ちなみに、携帯端末によっては対応している周波数帯が異なるため、基地局から出る周波数帯によっては利用できないケースが発生するおそれがある。ユーザーは、自分のスマホが非常時のローミングに対応しているかどうかを確認できるようにしてもらわなくてはならない。また、今後発売される携帯電話は、事業者間ローミングを可能にする周波数帯に対応することが期待される。

 なお、現在主流の4G、5Gとは通信方式が異なる3G携帯電話は、KDDIに続き、ソフトバンク、ドコモもサービス終了を予定しており、事業者間ローミングの対象機種にはしないという。

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