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ベートーベンの楽曲に「三三七拍子」は入ってる? 音符36万個を学んだAIで調べる「Beethoven Beats」遊んで学べる「Experiments with Google」(第29回)(2/2 ページ)

» 2023年01月27日 17時30分 公開
[佐藤信彦ITmedia]
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ベートーベンはモーツァルトの影響を受けたのか?

 ベートーベンはモーツァルトから多くの影響を受けたらしい。それならモーツァルトの作品で使われたモチーフが、ベートーベンのピアノソナタに使われていてもおかしくない。早速探してみる。

 取り上げるモーツァルトの曲は、この連載の別記事「AIオーケストラの指揮」で使った名曲「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」にした。「タン、タタン、タ、タタタタタ」という最初のメロディは、多くの人が知っているだろう。

photo アイネ・クライネ・ナハトムジークはピアノソナタ第27番に当たる

 提示された結果は、「ピアノソナタ第27番」の第2楽章になった。とても美しい曲なのだが、運命のモチーフほど似ているようには思えない。モーツァルトのほかの曲をいろいろと入力すれば、もっとよく似た曲が見つかるだろうか。

聞いてみるとちょっと違っていて、あまり似ていない

日本で定番の三三七拍子 ベートーベンも使ったのか?

 最後にベートーベンと縁遠いリズムということで、日本で定番の三三七拍子を探してみた。見つかったのは、「ピアノソナタ第21番『ワルトシュタイン』」の第1楽章。美しいメロディに気を取られて気付かなかったが、リズムは確かに三三七拍子と似ている。

 これは面白いものに出会えた。他にも意外性のあるリズムを使ったピアノソナタを見つけて、友達に自慢したくなる。

photo 三三七拍子はピアノソナタ第21番にあった
音程を無視したら、確かに三三七拍子だ

AIがソナタ32曲を学習 音符は36万個分

 Beethoven Beatsを開発したのは、Googleのアート紹介プロジェクト「Google Arts & Culture」のチームだ。長い歴史を誇るドイツのレコードレーベル・Deutsche Grammophonと、指揮者でありベートーベンのピアノソナタ演奏で知られるピアニスト・Daniel Barenboim氏も開発に協力していて、力の入れ様が分かる。

 開発チームは、Googleのオープンソース機械学習ツールキット「TensorFlow」や音楽製作ツール「Magenta」を利用している。ピアノソナタ全32曲のデータを学習させ、入力したリズムに似た部分を見つけ出すAIを作った。学習データの量は録音時間が13時間、音符の数は36万2142個に及んだという。

 リズムから該当する曲を探し出すという作業自体は、人間の方が上手にこなすだろう。しかしこれだけ膨大なデータが対象になると話は別だ。人力検索は難しいので、AIに任せる選択肢は有用だ。Beethoven Beatsは音楽を楽しめるだけでなく、AIのユニークな活用方法を知れるツールになった。

 なお、Beethoven Beatsは、ベートーベンを多彩な角度から楽しんだり学んだりできるGoogle Arts & Cultureのまとめページ「Beethoven Everywhere」に含まれるコンテンツだ。ベートーベンの作品を使ったリズムゲーム「Blob Beats」や、ベートーベンとポピュラー音楽との関係を紹介するコーナーなどもある。ベートーベンの新たな一面を知ることができるはずだ。

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