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なぜ人々は、ChatGPTという“トリック"に振り回されるのか? Google「Bard」参戦、チャットAI戦争の行方清水亮の「世界を変えるAI」(2/8 ページ)

» 2023年02月10日 07時00分 公開
[清水 亮ITmedia]

 Meta社の研究機関である旧Facebook AI Research(FAIR)が公開している「ParlAI」は、かなり前から深層学習によるチャットボット機能を搭載していた。このParlAIのチャットボットは、Amazon Mechanical Turkで集められたクラウドワーカーとの会話をデータセットとして学習している。

AIの第一人者として知られるヤン・ルカンが関わった「ParlAI」

 このデータセットは、まずクラウドワーカーが生徒役と教師役に分かれ、教師役はWikipediaのランダムな項目について説明文を要約し、生徒役は要約に対して質問、教師役は質問の答えをWikipediaの記述から探して答える、という大掛かりなものだ。これが2年も前のことである。

 最近、Facebook AI ResearchあらためFundamental AI ResearchことFAIRのヤン・ルカン(AIの第一人者として知られる)は、「ChatGPTは革命的ではない」という主張をした。自分達も数年前から深層学習による会話データセットの構築とそのオープン化を推進していたわけだから、これは当然の主張だろう。FAIRは今現在、最も主流といわれる深層学習フレームワークPyTorchの開発元でもある。

 そしてルカンはこうも言っている「規模を大きくすれば会話の質が上がるわけではない」と。

 なにせ、深層学習によるチャットボットを何年も作っているチームのトップの発言である。筆者の直感も同様だ。だからChatGPTの延長線上に、果たして欲しいものがあるのかどうかには疑問が残る。

 なぜ規模を増やすだけではダメだと思うのか、そして同時に、なぜ人々は、ChatGPTという“トリック"に振り回されてしまっているのか、それをひも解くにはチャットボットの歴史を振り返る必要がある。

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