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「チャットAI検索」でWebの“再起動”が起こる? ChatGPTやBingなどがもたらす可能性小寺信良のIT大作戦(1/3 ページ)

» 2023年02月24日 11時30分 公開
[小寺信良ITmedia]

 米Microsoftが現地時間の2月7日、AIを搭載した「新しいBing」検索エンジンを発表、同日より限定プレビュー版の提供が開始された。PC向けからスタートし、モバイル版のプレビューも追って登場した。

「新しいBing」

 「新しいBing」を試すには、順番待ちのリストに参加する必要がある。筆者は発表された3日目ごろに登録したのだが、最近ようやく利用可能となった。多くのテスターはWindowsユーザーだろうが、MacOSでも最新のMicrosoft Edgeをインストールすれば利用できる。検索エンジンのみならず、ブラウザの乗り換えも共用されるわけだが、2020年からMicrosoft EdgeはChromiumベースになっており、拡張機能などもそのまま使えるものが多いことから、使い勝手はそれほど変わらないのではないかと思っている。

申し込んで数日後に利用可能になった

 チャットによるAIの検索利用と言う点では、米Open AIが22年11月に公開した対話型人工知能「ChatGPT」の話題が先行した。Open AIには、Microsoftも出資している。そんな関係からBingにチャット型のAIによる検索機能が搭載される事になったわけだが、「新しいBing」に搭載されているものは、MicrosoftがOpenAIの技術をベースに開発した言語モデル「Prometheus」とされている。

 Webブラウザには今もなお多くの選択肢があり、WindowsユーザーはデフォルトのEdgeを使い続けるかもしれないし、MacユーザーはデフォルトのSafariを使うかもしれない。Chromeが唯一の選択肢というわけではない。

 一方サーチエンジンはGoogle一強時代が長く続いており、MicrosoftのBingは長年苦戦を強いられてきた。「新しいBing」に組み込まれたチャットAI機能は、こうした状況を巻き返すための重要なツールとなりうる。サーチエンジンのために、ChromeからEdgeに乗り換える人も出てくるだろう。

 もちろんGoogleもこれに対抗すべく、会話型AIサービス「Bard」のリリースが予定されている。ただその回答に誤答があったことが指摘され、株価が急落した。ただ、これはまだリリース前の話で、こうした問題に対してはリリースしてからも修正が加え続けられるたぐいのものだろう。

チャット型の検索は、何を変えるのか

 これまでわれわれが行なってきた検索手法では、検索窓に調べたい情報に関するキーワードを入力してきた。さらに絞り込むときは、スペースで区切って複数の関連キーワードを入力したり、「いつ」や「なぜ」などのワードも追加してきた。

 そして見つかったサイトの中から信ぴょう性の高そうなサイトを選んで、中身を見ていく。中身が冗長であれば、いったん斜め読みして関係ありそうなところをもう1回読み直すといった作業を、いくつかのサイトで行なう。そして「要するにこういうことなのか」と自分の中でまとめて何らかの結論を出すわけである。

 ただこうした検索方法を、不自然だと思う人も多い。例えば「ソニー 決算 最新 いつ」みたいな入力がすらすらできる人と、そうでない人がいる。そうした中で、「ソニーの決算で最新のはいつ?」と話し言葉で検索したいというニーズがあり、チャットAIはそれに対応する正常進化…などといった生やさしいものではなかった。

 「新しいBing」に代表されるチャット型検索エンジンは、われわれの想像を遙かに超えてきた。単に情報を見つけてくるのではなく、知りたいことに対する回答を「ジェネレート」してくれる。これまで人間が複数のサイトを見ながら頭で考えてきた「要するに」の部分を、代わりにやってくれるわけである。

 ネット上では英語の論文のURLを示して、それの要約を頼むと日本語で結果を返してくれる様子などが見つかる。またその要約の根拠となる記述のURLも示してくれる。これまでもDeepLなどの翻訳ツールを使って日本語に翻訳すれば、論文の全文を読むことができた。だが「要するに」を考えるのは自分である。そこに要約まで加われば、理解スピードは従来の数倍に加速する。

 われわれライターが記事を書く際には、多くの調べものが必要になる。だが中にはいくら読んでも理解できないものもある。「要するに」ができなかったわけである。自分で理解できないものは自分の知識として書くことができないので、その事象についての記述は断念するケースもある。

 だが要約を作ってくれて、分からないところは追加で聴けるわけだから、「要するに」をサポートする強力なツールができたことになる。個人的には全ての調べものがチャット型で済ませられるとは思わないが、これまでのタイプの「ググる」方法の限界を超える事ができるのは確かだ。

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