遅れてGoogleもこの分野に参入することで、競争が始まる。今後はこうした要約が得られるタイプの検索エンジンが普及してくることは確実だ。特にスマートフォンに対応していけば、音声入力によって得られる回答の質も爆上がりするはずで、その恩恵が受けられる人の数も、今のデスクトップ版の比ではなくなるだろう。
しかしこの検索方法が普及することで、Webに情報を出す事の価値や意義が一変してしまう可能性もある。例えばこの記事もそうだが、いわゆる商業メディアサイトに記事を掲載すれば、読者が読みに来る。
そこでページビューのカウンターが回るとともに、広告が表示され、広告主の露出が成功する。あるいは広告をクリックして飛んでくれれば、さらに良い。昨今大手のニュースサイトでも、Ad Blockerのような広告排除拡張機能をOFFにするように促されるケースも多くなった。中にはOFFにしない限り記事を見せないという強硬な姿勢のサイトもある。
もちろん、広告モデルが回転することによって無償の記事提供が成立しているわけなので、広告が回らなければ会員制有料モデルへ移行するしかない。つまり今のWebは、実際にユーザーがサイトを見て、広告を目にすることで回っているし、成長してきたといえる。
だが多くの人がチャットAI検索を利用し、そのサマリーだけを読んでいる状況になれば、その参照元となったWebには単にサーチエンジンが一瞬通っただけで、広告の効果も得られない。
このことをBingに訪ねてみると、通常のユーザーアクセスと同じようにカウントされる可能性が高いとしながらも、分析ツールによってはアクセスが区別されるとしている。まあこのあたりは想定内である。
加えてサイトの広告が閲覧されたことになるかと聴いてみたところ、サイトの広告はEdgeの閲覧履歴に保存されること(おそらくサイト訪問履歴が残る、という意味か)、CookieやサイトデータによってBingのアクセスが追跡可能であることから、「広告は、閲覧されたことになると考えられる」と結論付けている。
技術的、あるいはWebにおける閲覧の定義に当てはめればそうかもしれないが、広告主は納得しないだろう。実際に質問者は、広告を一度も見ていないからである。
つまりチャットAI検索ツールは、新しいAd Blockerとなり得る。もちろんこのままではWebのエコシステムが崩壊してしまうので、何らかの形でチャットAI検索画面に広告が表示されるようになる日は近いだろう。特にWeb広告で利益を上げているGoogleが、自らのエコシステムを破壊してもこの道にまい進するとは思えない。
個人的には、チャット画面の脇に検索に使用したサイトの広告が表示されるのは仕方ないかと思う。その一方で、チャット文章に広告が挿入されるのは勘弁して欲しいと思う。リアル社会において、話の継ぎ目継ぎ目に広告を差し込んでくる相手を、信用できないだろう。
チャットAIが人間的であればあるほど、「信用の担保」もまた、人間的な尺度になる。そのバランスを、どう作っていくのか。
それもAIが答えを知っているのだろうか。
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