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仕組みは単純、なのに魅力的 サンプラーの元祖「メロトロン」の愛おしさ、アプリまで自作した筆者が語る古代サンプラーがアプリになるまで(2/4 ページ)

» 2023年02月24日 18時00分 公開
[山崎潤一郎ITmedia]

今でも音源テープを注文できる

 チェンバリン氏自身は、ロックが嫌いだったそうだが、この「古代のサンプラー」を有名にしたのは、図らずもロックアーティスト達だった。シンセサイザーが発展途上だった時代だけに、さまざまな音色を奏でることができるこの楽器に多くのアーティストが飛びついた。

 筆者の実機には、標準装備である3種類の音色、ストリングス(3 Violins)、フルート、チェロの3音色が収められている。1本のテープは3トラックに分けられている。ストリングスの正式名称を「3 Violins」としているのは、チェンバリン氏の自宅スタジオで3人のバイオリニストを使って「Neumann U47」マイクロフォンを使って録音された史実に由来する。3 Violinsは、初期のChamberlinはもちろん、メロトロン全盛の時代になっても代表的な音色として、そのまま引き継がれている。

専用アルミフレームに、35本の3/8インチテープがパーテーションに区切られた形で納められている

 他にも、フルート、チェロ、混声コーラス、ブラスなど、さまざまな音色が用意されており、ユーザーは好きな音色の組み合わせを選んで、英国のStreetly Electronicsやスウェーデンの 「mellotron.com」に現在でもテープをオーダーすることができる。例えば、3音色入りのテープは250ドル、そのテープを収めるアルミのフレームは400ドル、といった具合だ。

 テープの幅は、3/8インチという特殊なものだ。なぜ、一般的なオープンリールテープの1/4インチではないのだろうか。特殊な幅にすることで、第三者が簡単に音源を提供できないようにしたという説もある。

 他にどのような音色が用意されているのかは、Streetly Electronics Mellotron Tape Libraryで確認することができる。ここでは古い音源はもちろん、近年、録音された新しい音源も紹介されている。中には、元祖デジタルサンプリングシンセの「Fairlight CMI」から録音したものもあり、こうなるとデジタル生成した音源をアナログテープに録音して再生するという、どこか倒錯した世界が広がる。

Streetly Electronics Mellotron Tape Libraryでは、新旧取り混ぜてさまざまなテープ音源を聴くことができる

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