ITmedia NEWS >

慌てるな 免税事業者はインボイスどうすればいい? 税理士にぶっちゃけて聞いてみた(4/5 ページ)

» 2023年03月03日 15時01分 公開
[岡田有花ITmedia]

税負担は? トクな計算方法選ぼう

インボイス発行事業者になった場合の消費税負担はどれぐらいですか?

 「本則課税」「簡易課税」「2割特例」の3種類から選べます。事業者は、最もトクになる税率を選ぶといいでしょう。計算が簡単かつ、多くの業種でトクになるのは「2割特例」です

 本則課税は、預かった消費税と支払った消費税の差額を納税します。売上税額から、仕入れにかかった消費税(インボイス記載分)を、一つ一つ合算して差し引く計算が必要になります。

 簡易課税は、年商5000万円以下の事業者が選べる制度で、売上高の50〜90%(業種によって異なる)を「みなし仕入率」として、消費税額を計算します。仕入にかかった消費税を一つ一つ計算しなくて良いので、本則より計算が格段に楽になります。ただ、実際の仕入れ額がみなし仕入率より大きい場合は納税額が本則より増えます。

画像 簡易課税の業種別「みなし仕入率」

 「2割特例」は、免税事業者が課税事業者になった場合に限り、消費税額を売上税額の2割にできる(仕入税額80%と同等)制度です。売り上げに対して仕入が80%を下回る場合は、これを選ぶのが最もトクです。インボイス導入時の「激変緩和措置」として作られたもので、26年9月30日までの3年限定です。

結局、どれがトクなの?

ややこしいですね。私はライターなのですが、どれを選ぶのがよいでしょうか?

 ライター業の場合は、簡易課税の税率は50%で、仕入率が80%を超えることはあまりないでしょうから、「2割特例」を利用するのが最も有利になるでしょう。売上高が300万円ならその10%の30万円が消費税額。その20%の6万円が納税額です。簡易課税を選んでしまうと、10%の30万円が消費税額。その50%の15万円が納税額と、2割特例の倍以上の税額になってしまいます。

 卸売業の場合は、簡易課税のみなし仕入率が90%と高いので、「2割特例」(みなし仕入率80%と同等)より簡易課税がトクです。卸売業以外の業種は、みなし仕入率が80%以上なので、基本的に2割特例がトクになります。

 ただ、どの業種でも、売上税額より仕入税額が大きいなら、本則課税がトクになります。消費税の還付(返金)を受けられますから。例えば、開業1年目の飲食店など、売り上げは小さいが、設備投資に大きなお金がかかった場合などです。

画像 財務省による「2割特例」の説明。3年間限定だが、多くの場合「2割特例」がお得になる

 注意点としては、2割特例は3年限定であり、簡易課税も将来、なくなる可能性があるということです。消費税の導入当初は、売上高3億円の事業者まで簡易課税を選べましたが、今は5000万円まで下がっています。将来的になくなってもおかしくないでしょう。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.