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「我々はテックカンパニー」 住信SBI銀、ネット銀行で初の上場

» 2023年03月29日 17時40分 公開
[斎藤健二ITmedia]

 3月29日、住信SBIネット銀行は東京証券取引所スタンダード市場に上場した。ネット銀行として国内初の上場であり、令和以降初の銀行上場でもある。

 同日会見を行った円山法昭社長は、次のように話し、技術への注力を強調した。「我々はテックカンパニー。徹底的にテクノロジーに投資してきた。APIを初めて導入した銀行であり、住宅ローンをはじめ、ほとんどのすべての商品でAIを使った審査をしている」

住信SBIネット銀行の円山法昭社長

 同社の社員の過半数はシステムやテクノロジーに従事しており、技術の活用によって同業他社よりも経費率を抑えた。今後も、テクノロジーへの投資を続け、他社との差別化を目指す。上場の目的もテクノロジー人材の獲得が狙いの1つだ。

 「人材獲得競争が、テック企業との争いで厳しくなってきている。知名度向上や(ストックオプションなど)インセンティブ制度の導入を考えると、株式上場は必須だ」(円山氏)

テクノロジーの活用によって、業界他社と比べて経費率の低い、効率的な事業運営を特徴とする

銀行業はベース、これからはデータビジネスのテックカンパニー

 現在の同社の事業の中心は消費者向け銀行事業で、特に住宅ローンが強い。2022年3月期は貸付額が約45%成長しており、25年3月期には年間2兆円を超え、業界内のシェア10%を目指す考えだ。

 また銀行機能をサービスとして他社に提供するBaaS(バンキング・アズ・ア・サービス)事業は、10社がサービス開始済みで15社が導入を決定している。すでに黒字化していると円山氏は言う。「来年度は20社以上がスタートする。将来は銀行収益と同じくらいのボリュームになってくる」

BaaS事業を切り開いてきた住信SBIネット銀行。昨今、他のネット銀行も参入しているが「15社のほとんどすべてがコンペで我々が選ばれている」と円山社長は商品力に自信を見せた

 今後は、銀行業をベースとしながら、そこで得られたデータを活用し、新たなビジネスに進出する考えだ。すでに、顧客のパーソナルデータを用いた広告配信事業を1月5日からスタートしている。

 「銀行業の次はデータビジネスだ。広告は、現在のCookieベースから、顧客の同意を取った上で、IDベースで補足した状態で広告を配信するように変わっていく。サプライチェーンDX事業に進出することも決定しているし、カーボンクレジット事業にも参入したい」

今後の事業の方向性

 なお同じSBIグループ内に、SBI新生銀行があるが、競合は意識しないし特に特別な連携も考えていない。「あえて棲み分けはしない。独立した会社の1つとして成長を目指すためにも上場が必要だった。切磋琢磨し両社合計でシェアが増えればいい」(円山氏)

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