問題はこの部分だ。確かにルール自体は改悪なのだが、実際にどれだけのユーザーが影響を受けるのか。PayPayは段階的にルールを改変しており、特にここ数年は他社カードをひも付けてのポイント還元は行わないようになっている。銀行口座の振替やソフトバンク回線の「まとめて支払い」などでチャージした残高か、あるいはPayPayカードのひも付けのみがポイント還元の対象だ。つまり他社カードをひも付けしているユーザーは「ポイント還元目的」ではないことを意味する。
では、この他社カードをメインで利用しているユーザーはどの程度いるのだろうか。残高やポイント支払いなどと組み合わせて、必要なときに他社カードの支払いを利用するというケースは考えられるが、他社カードメインというユーザーの総数はそれほど多くないというのが筆者の意見だ。
PayPay自身が出すデータの他、Zホールディングス(新社名:LINEヤフー)やソフトバンクが決算発表時に報告するPayPayの最新状況をウォッチする必要があるが、実際に離脱があるのであれば、決済回数の数字に反映されてくるので、それで判断が可能だろう。冒頭で公式回答として「それぞれについて社内で協議し、総合的に検討した結果」とPayPayが説明しているが、「影響は軽微」と判断したうえで選択されたルール変更だと思われる。
今回はPayPayがやり玉に挙がったが、実際にはコード決済を提供する競合他社も似たような状況にある。楽天ペイでは自社の楽天カードではないクレジットカードでもひも付けが可能だが、還元のメリットが得られない。このあたりはd払いも同様だ。そのため、競合について「コード決済に紐付けるクレジットカードの大部分は自社カードのユーザー」という情報を得ている。
PayPayも例外ではなく、おそらく現時点でクレジットカードを紐付けて利用しているアクティブユーザーの大部分はPayPayカードを利用していると思われる。他社カードそのものは今後排除されることになるが、口座振替による残高決済という道は残されているし、還元を目的とするならPayPayカードを作るのも手だ。ソフトバンクの「まとめて支払い」については手数料徴収が発表されているが(これも料金引き落とし時の手数料削減のため)、月1回のみは無料であり、必要金額を一度にまとめてチャージしてしまえば損はない。
それより、筆者が気にしているのは「クレジットカードやコード決済など、日本のキャッシュレスがポイント還元を主な動力として動いている」という点だ。
確かにポイント還元は利用のモチベーションを喚起するが、その原資は結局はユーザーが支払うもので、実際には「手数料」「カード会費」などの形で徴収されている。日本のカード決済手数料が高止まりしている理由の一つであり、還元施策を中心としたポイント経済圏による囲い込みの激化は、出血しながらマラソンを続けているようなものだ。
おそらく、どこかのタイミングで「利便性」など、本来の意味でのキャッシュレスのメリットを享受できる体制の構築が必要で、コード決済の世界で事実上の一強となったPayPayには、ぜひ「キャッシュレスの次」を見せてほしいと考えている。
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