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紙に“隠しARデータ”を埋め込む電子透かし技術 Adobeが開発 家庭用プリンタで印刷可能Innovative Tech

» 2023年05月09日 08時00分 公開
[山下裕毅ITmedia]

Innovative Tech:

このコーナーでは、テクノロジーの最新研究を紹介するWebメディア「Seamless」を主宰する山下裕毅氏が執筆。新規性の高い科学論文を山下氏がピックアップし、解説する。Twitter: @shiropen2

 米Adobe Researchに所属する研究者らが発表した論文「StandARone: Infrared-Watermarked Documents as Portable Containers of AR Interaction and Personalization」は、一般家庭でよく使われているインクジェットプリンタで紙に隠しARデータを埋め込める電子透かし技術を提案する。仕込んだ紙にスマートフォンをかざすことで、隠れたデータをARで閲覧できる。

家庭用プリンタで印刷するだけで、紙の内容を邪魔せずにARコンテンツを埋め込める。閲覧者は、スマートフォンをかざすことでARコンテンツを体験可能

 QRコードを紙の一部に印刷して、読み取らせることでデータにアクセスさせる手法は一般的に利用されている。今回はQRコードを用いず、知らなければ読み取ることができない隠しデータを印刷できる手法となる。具体的には、インクジェット印刷と近赤外線(NIR)インクを組み合わせて、ARコンテンツを不可視に印刷する。

 ユーザーは、専用のオーサリング・ユーザーインタフェースを使用して、どの箇所にARコンテンツ(テキストラベルやボタン、シンプルなベクターグラフィックなど)を埋め込むかを決め、これらのARコンテンツに対するインタラクション動作を定義できる。ARコンテンツはウォーターマークでエンコードされ、IRインクを導入した家庭用インクジェットプリンタで印刷可能。

オーサリングツールにより、紙のどの箇所にどんなARコンテンツを配置するかを決定できる

 電子透かしには、ユーザーがARシーンを起動し、インタラクションするために必要な全てのデータが含まれている。AR体験を埋め込んでも、追加されたタグは完全に見えないため、本来の紙の内容を邪魔せず埋め込むことができる。

 閲覧者は、スマートフォンのIRカメラを使って電子透かしを読み込み、紙の上でARシーンを体験することができる。レストランメニューの補足説明や、数学の問題や論文などの補助的説明、商品パッケージへの埋め込みなど、さまざまな用途での使用が考えられる。

StandARoneの使用例

Source and Image Credits: Mustafa Doga Dogan, Alexa F. Siu, Jennifer Healey, Curtis Wigington, Chang Xiao, and Tong Sun. 2023. StandARone: Infrared-Watermarked Documents as Portable Containers of AR Interaction and Personalization. In Extended Abstracts of the 2023 CHI Conference on Human Factors in Computing Systems(CHI EA ’23). Association for Computing Machinery, New York, NY, USA, Article 260, 1-7. https://doi.org/10.1145/3544549.3585905



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