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楽天カードのクレカ積立 改悪から一転、還元率アップの裏にある狙い(3/4 ページ)

» 2023年05月19日 14時42分 公開
[斎藤健二ITmedia]

上位カードほど大きい取扱高

 では楽天カードが上位ランクのカードを促進するのはなぜか。大きな理由の一つは取扱高のアップだ。

 楽天カードは、中期目標として、カード発行枚数3000万枚、ショッピング取扱高30兆円、取扱高シェア30%を「トリプル3」として掲げている。このうちカード発行枚数は2863万枚(3月末)と順調だが、ショッピング取扱高は直近12カ月の合計で19.1兆円と、目標まであと10兆円が必要な状況だ。

楽天カードの中期目標「トリプル3」の進捗状況(楽天グループ決算資料より)

 「上位カードを打ち出すことが、トリプル3達成のための成長に必要だ」と岩月氏。

 具体的な数字は明かさないもの、上位ランクのカードのほうが利用の平均単価が高い。一人が複数枚のカードを保有するのが普通となった昨今、年会費の発生する上位カードは優先して使われることが多く、それが利用額の増加に貢献するのだという。

 還元率アップによる需要喚起は、楽天証券側でも待望していたはずだ。クレカ積み立て還元率を引き下げた途端、これまで順調に増加していた投信積立設定金額は減少に転じた。22年12月末時点の設定金額は1003億円となり、積立件数も639件と前四半期に比べわずかに減少したからだ。

 還元率引き下げを行う楽天に対し、競合他社は同時期に還元率を引き上げている。特にSBI証券と三井住友カードは、22年12月に上位ランクの「三井住友カード プラチナプリファード」において、還元率を5%にアップさせた。

 プラチナプリファードは年会費が3万3000円の高ランクカードだが、クレカ積立を最大額行うと還元額は3万円相当に達する。三井住友カードがカード新規保有者向けに行ったアンケートによると、回答者の約半数が申し込みを後押しした施策として、SBI証券でのクレカ積立を挙げた。

 さらに同アンケートでは、プラチナプリファード申し込み前に使っていたメインカードとして、1位は三井住友カード ゴールドだが、2位に楽天カード 一般が入っている。クレカ積立のポイント還元が、上位ランクカードの申込みを誘引するだけでなく、メインカードの座を奪うことまで、競合カードが証明してみせた形だ。

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