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エンジン車の燃費と全く違う“電費のクセ” テスラ「モデル3」の場合走るガジェット「Tesla」に乗ってます(3/4 ページ)

» 2023年06月29日 17時30分 公開
[山崎潤一郎ITmedia]

電費悪化の犯人はエアコンか?

 ただ、筆者の中には、エアコンは電費にそこまで影響するものなのか、という疑問が残ったままです。普段、5〜6km/kWhの区間で、1.33km/kWhまで悪化しているわけで、単にエアコンが原因とかたづけてしまっていいものかどうか釈然としません。

 とはいうものの、後述するように、普段なら約3分で駆け抜ける区間を1時間10分かかって走行しています。その区間で消費したエアコンの電力量の積算は、クルマを前に進めるエネルギーに対し相対的に大きくなり、それが電費に影響を及ぼしたということになります。

 ならば、同じ区間を順調に走行した際にはどの程度の電費なのか確認してみましょう。次の図は、別の日に老名付近から綾瀬スマートIC付近を順調に走行した際のグラフです。平均94km/hで約3分弱で駆け抜けています。データを吸い上げるタイミングをこちらでコントロールできないので計測区間が4.12kmと多少長くなっていますが、ご容赦ください。

前述の工事渋滞と同じ区間を平均94km/hで約3分弱で駆け抜けた場合の電費は5.02km/kWhだった

 この順調走行区間におけるバッテリーのSOC(State Of Charge:充電状態)は、約1%の減少なので、渋滞時と同じ0.82kWhの電力消費ということになります。電費は5.02km/kWhでした。ほぼ同じ距離を走行して、消費電力が同じということになります。

 ということは、件の渋滞時の電費悪化は、エアコンによる電力消費が電費に影響しているとしか考えられません。一部には夜の走行だったので「ライト類の電力消費もあるのでは?」というご意見もあろうかと思います。

 しかし、Teslaが公開している「Model 3緊急対応ガイド」には「Model 3には、高電圧システムに加えて低電圧電気システムがあります。その12Vバッテリーは、SRS、エアバッグ、ウィンドウ、ドアロック、タッチスクリーン、インテリアおよびエクステリアのライト類を動作させます」とあります。つまり、ライト類の電力は、メインの動力バッテリーではなく、ガソリン車と同様の12Vの補機バッテリーから供給しているわけです。

 で、エアコンの電力は、というとTeslaサイトの「高電圧コンポーネント」に「ヒートポンプアセンブリ」と記載されてるように、メインのバッテリーから供給されていることが分かります。

Teslaは、高電圧(400ボルト)のアーキテクチャを採用。アウディ、ポルシェ、ヒョンデなどは、800ボルトシステム

 ちなみに、この順調走行時は寒い日で、設定温度22度、外気温12.5度、車内温度21度、ファンの速度「1」という状況だったので、前述の最悪渋滞時よりはエアコンの電力消費は多いはずです。

 エアコンの電力消費が多いと思われる環境にありながら電費がよいということは、約3分で駆け抜けたこの区間においては、エアコンによる電力消費の時間積算分が少なかったということであり、電費に対する影響が相対的に少なかったということです。

 次の図は、帰宅時に撮影した、渋滞区間を含む直近50km区間のエネルギー消費グラフです。渋滞区間だけ突出して悪化しているので、びっくりしますが、渋滞前後を含む直近50km区間の平均電費は153Wh/km(6.7km/kWh)と通常通りなので、渋滞時のエアコン使用による悪化は、 大勢に影響がないことがわかります。

 ガソリン車で燃料が少ないときに、渋滞に遭遇するとガス欠の恐怖が脳裏にちらつきドキドキしますが、EVの場合はそこまで心配しなくてもよさそうです。

渋滞区間だけ突出して悪化しているが、全体を通した平均電費には大きく影響していない

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