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エンジン車の燃費と全く違う“電費のクセ” テスラ「モデル3」の場合走るガジェット「Tesla」に乗ってます(1/4 ページ)

» 2023年06月29日 17時30分 公開
[山崎潤一郎ITmedia]

 「iPhoneにタイヤをつけたようなクルマ」と表現されるTesla。IT・ビジネス分野のライターである山崎潤一郎が、デジタルガジェットとして、そしてときには、ファミリーカーとしての視点で、この未来からやってきたクルマを連載形式でレポートします。

EVは渋滞時、電費が向上する不思議

 「エンジン車の常識は、EVの非常識」という格言(?)があるかどうかは分かりませんが、Model 3を日々運用しているとエンジン車時代の常識では計り知れない状況に直面することがあります。その1つが「電費」です。エンジン車で言うところの「燃費」です。本稿では、Model 3の電費について考察します。

全面ガラスルーフにはつらい季節。サンシェード使用や木陰を選んで駐車するも車内温度は60度近く。停車中エアコンで温度上昇の抑制は可能だがバッテリーを消費

 エンジン車の場合、一般論として、渋滞に捕まると燃費が悪化するのが普通です。例えば、Model 3の前に乗っていたV6エンジンのメルセデス・ベンツ(2008年製)は高速道路の長距離走行時の燃費は、12〜14km/Lが普通でした。しかし、市街地の通常走行で7〜8km/l台、渋滞につかまると、ひどい時には5km/l台まで下落しました。市街地や渋滞時には、高速道路に比べ、燃費は半分程度か、それ以下に落ち込むという感覚で運用していました。

 しかし、EVは、通常走行時より、渋滞時の方が電費が良くなるケースが多いといわれています。モーターという原動力の特性であったり、空気抵抗の影響であったり、複数の要因がそうさせます。筆者の2年弱のModel 3運用の経験においても、渋滞時の電費は、通常のそれと比較して同等か、あるいは向上するという認識です。

 次の図は、東京の日本橋から横浜に向かった際、途中の中原街道で渋滞に巻き込まれた際の消費電力(kW、黒線)とスピード(緑線)の関係を記録したグラフと、その状況をGoogleマップ上にプロットしたものです。マップ上で赤く表示されている五反田付近から洗足池付近までは、平均速度5km/hという低速走行が続きました。グラフでいうと、中央の変化率の少ない凹部分がそうです。

五反田から洗足までの走行速度と電費

 グラフ左側の目盛りが電力消費を示します。グラフの横軸は時間です。渋滞中は、ほぼゼロ付近を推移しています。つまり、前進するのに時間はかかっていますが、その間、動力用の電力消費は最小限に収まっているわけです。考えてみれば当然で、EVは停まっている時間は、エアコンなどを除きエネルギーを消費しません。

 このときの電費は、平均時速5km/hで3.64km/kWhでした。この渋滞のまったく同じ区間を比較的順調に平均時速29km/hで走行した際は3.34km/kWhだったので、渋滞時の方が電費が向上しています。

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