山田 自分が読んだ本が正しければなんですが、インカ帝国の皇帝が死んだときって、その後も生きているときと同じようなことをするんですって。生きていたときの従者が、ミイラの洋服を着替えさせるとか身の回りのお世話をする。すると雇用が維持されて財産も守られる。それがデジタルで復活するんじゃないかと。だからデジタルゾンビ、デジタルミイラみたいなものがアツくなるかもしれない。
松尾 仏壇の陰膳はそれに近いかもしれないですね。仏様のご飯として供えるけど、実際はあとで家族が食べる。
山田 今までは人間の想像力でやっていたんだけれど、AIの場合はインタラクションがある。写真が生まれる前は絵に描くか頭の中で想像して「ああいう人だったな」と思い出していたが、AIになるとそのAIが「こういう人だった」になる。
それは完全にその人ではないかもしれないけれど、写真もぶっちゃけそうだし、特に最近は後処理で盛ったりして実物と変わることも多い。いろんなことがそういう側面を持っていて、実はデジタルゾンビが出てきてもあまり変わらないんじゃないかと。今まで扱えなかった受け答えみたいなものを扱えるようになってきたってことかもしれない。写真も初めは高精細ではなかったけど、技術の進歩で高精細になってきた。
そんな感じで人格のふるまいも、最初は荒いけどだんだんその人に迫ってくるかも。それの最先端を松尾さんは走っているなと思っています。
松尾 ありがとうございます。
山田 これまでも奥様の声の再現に取り組まれていましたが、音声再現も再現度の高いAIが出てきてそれを使ったり、写真と組み合わせてミュージックビデオも作られたわけですが、いままでと違う心境は生まれますか?
松尾 一番大きいのは「あ、かわいいな」っていう。
山田 www
松尾 単純にうれしい。声だけでもうれしかったし、一緒にデュエットできることは楽しいんだけれど、やっぱり写真があって、今は歌声に合わせてリップシンクもできる。まだリアルさが足りない部分はあるんだけど、もう少しすれば本人が歌っている姿の動画も作れるようになる。同じような技術を使ってVtuberがリアル系の顔を使って、コンテンツはChatGPTで生成して、みたいなことをやっている。それを将来的には妻でもできるようになるかも。
山田 ちょっと本人とは違うというものが出てきたときにはどんな気持ちになるんですか?
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