日本音楽著作権協会(JASRAC)は7月24日、生成AIに対する考え方について声明を出した。「生成AIの開発・利用は、創造のサイクルとの調和の取れたものであれば、クリエイターにとっても、文化の発展にとっても有益」と、その可能性を認める一方で「AI開発事業者によるフリーライドが日本においては容認されるとする見解が散見されるため、大きな懸念を抱かざるを得ない」と危機感も示している。
JASRACの声明は全4項目。以下、全文を引用する。
1.人間の創造性を尊重し、創造のサイクルとの調和を図ることが必要です。
生成AIの開発・利用は、創造のサイクルとの調和の取れたものであれば、クリエイターにとっても、文化の発展にとっても有益なものとなり得ます。
しかし、クリエイターの生み出した文化的所産である著作物が生成AIによって人間とは桁違いの規模・スピードで際限なく学習利用され、その結果として著作物に代替し得るAI生成物が大量に流通することになれば、創造のサイクルが破壊され、文化芸術の持続的発展を阻害することが懸念されます。
2.フリーライドが容認されるとすればフェアではありません。
著作権法第30条の4の規定によって、営利目的の生成AI開発に伴う著作物利用についてまで原則として自由に行うことが認められるとすれば、多くのクリエイターの努力と才能と労力へのフリーライド(ただ乗り)を容認するものにほかならず、フェアではありません。
そのようなAI開発事業者によるフリーライドが日本においては容認されるとする見解が散見されるため、大きな懸念を抱かざるを得ません。
3.AIには国境がないので、国際的な調和を確保すべきです。
政府のAI戦略会議がいう通り、「AIには国境はなく、国際的な流通が容易であり世界中に影響を及ぼし」ますので、「国際的に共通の大きな考え方・ルールの整合性」を確保していく必要があります。G7広島首脳コミュニケで掲げられた「責任あるAIの推進」、「透明性の促進」といった観点からさまざまな課題に対処すべきです。
生成AIの学習に伴う著作物の利用について、「著作物に表現された思想又は感情」の享受の目的がないという整理の下に著作権を制限する法的枠組みを持つ国はG7の中で日本だけであり、調和の観点から大きな懸念があります。
4.クリエイターの声を聴き、懸念の解消を図るべきです。
上記1から3までの通り、現状では、多くのクリエイターが生成AIについて懸念を抱いています。
国内の議論を充実させ、国際的な調和を図るためには、クリエイターの意見を広く丁寧に聴くことが欠かせません。
そして、世界中のクリエイターが安心して創作活動に打ち込むことができるよう、その懸念の解消を図ることが文化芸術及びコンテンツビジネスの持続的発展のために必要です。
同協会は今後、クリエイターが安心して創作に専念できる環境の実現に向け、提言を進めていくという。
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