永嶋COOへのインタビューからは、以下のことがうかがえる。
ここから見えてくるのは、SaaSを起点に業務プロセス全体に対し価値提供を行っていく戦略だ。イタンジの場合、自ら賃貸不動産業を営むことで得た解像度の高さを武器にドアノック商材を浸透させ、他のプロダクトの提供につなげている。
実は、似た動きは他の業界でも起き始めている。特に、プロダクトの多角化は顕著だ。例えば調剤薬局業界向けにSaaSを提供するカケハシは、祖業の電子薬歴システムだけでなく、経営管理システム提供や薬局間における医薬品二次流通事業へのM&Aなど価値提供領域の多角化を進めている。
リクルートが提供するPOSレジアプリ「Airレジ」シリーズも、予約システム、順番待ちシステム、勤怠管理など、店舗型ビジネスの全業務範囲をカバーするなどの動きを見せている。
SaaSと言えば「クラウドで使えるソフトウェア」といったイメージがあるが、バーティカルSaaSでは、システム提供を起点として、業界のバリューチェーン全体をアップデートしていく動きが加速している。
これまで「日本経済の課題は中小企業の生産性の低さにある」といった指摘もなされてきたが、一つ一つの業界に目を向けると、新興バーティカルSaaS企業の取り組みが呼び水となり、変革の兆しが芽生えつつある。このような取り組みがあらゆる業界で起きるとき、日本の真のDXが始まるのかもしれない。
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