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「iPhone 15 Pro」で現代に復活したAndroidスマホ黎明期の“ある機能” Vision Proとの合わせ技で復権なるか(3/5 ページ)

» 2023年09月13日 07時00分 公開
[井上輝一ITmedia]

 結果論かもしれないが、スマホのカメラが優れているのは「他人に即座に共有できる」部分だ。画質は今でこそ本格的な一眼カメラにも追いつかんとするクオリティだが、真面目に撮影するなら一眼カメラの方が良いのは変わらない。それでも一眼カメラにもない優位性でコンパクトデジタルカメラ市場をスマホが壊滅させたのは、ひとえにその即時性だと筆者は考えている。

 しかし、3Dで撮ってもまともに共有する手段がなかった。いや、当時を深く思い出せばもしかしたら同機種間での共有手段などはあったかもしれないが、SNSの写真アップロード機能が3Dフォトに対応するわけもなく、ほとんどのスマホ・PCユーザーのディスプレイ環境も3D表示に対応していないわけで、「3Dの体験」を他人に共有しようがなかったと言える。撮れるものも「2視点の視差を見せるだけ」であり、それ以上に立体構造を再現するものでもなかった。

時代はボケ再現と多焦点化へ

 さて、そうしてスマホでの3Dへの試みは一度頓挫するのだが、カメラを複数使うアプローチは別の価値として開花する。それを切り開いたのはEVO 3Dを作っていたHTCだった。

 2つのカメラを使って3D写真が撮れるなら、そこには「深さ情報」が写っている。被写体がどれくらい近く/遠くにいて、その前後に何があるか。それが分かると何がうれしいかというと、“ボケ”の再現ができることだ。

 一眼カメラの優位性の一つは「大きなボケによる美しい表現」であり、スマホに搭載できる程度のレンズとセンサーではこれに太刀打ちできなかった。それを画像処理で生み出してしまえ、という機能を載せたスマホが、2014年発売の「HTC J butterfly HTL23」だった。

2014年発売の「HTC J butterfly HTL23」。メインカメラの1300万画素とは別に200万画素のサブカメラで深度情報を取得し、ボケを後から作っていた

 その後、ボケを含む2眼を使った画質向上は、中国Huaweiが独Leicaと協業したAndroidスマートフォン「HUAWEI P9」(2016年6月発売)でインパクトのある結果を残したこともあり、スマホ業界全体の流れとして定着していくのだが、同じタイミングでまた別のアプローチを始めたのがAppleだった。

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