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3年を経て別物に SHURE「AONIC 50 GEN 2」のノイキャン性能、飛行機で試してみた小寺信良のIT大作戦(4/4 ページ)

» 2023年09月15日 14時00分 公開
[小寺信良ITmedia]
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よく知ってる曲を「空間オーディオ」で聞いてみると……

 個人的にGEN 2の目玉ともいえる機能が、空間オーディオの対応だろうと思う。独自アルゴリズムの音楽モード、シネマモード、ポッドキャストモードを備えている。今回は音楽モードを中心に聞いてみた。

 試聴したのは、70年代を代表する名作、フリートウッド・マックの「噂」である。これがリマスターされ、Dolby Atmosで配信されている。筆者などは中学生の頃からずっと聞いており、細かいところまで暗記しているアルバムだが、GEN 2の新アルゴリズムで聞くと、記憶とは全然違う音が表現されていてびっくりした。

 「Dreams」はシングルカットされて大ヒットした曲で、ジョン・マクヴィの弾くベースが印象的だが、このベースの音が全然違う。ベースアンプに近寄って聞いているかのような音の深い沈み込みがあり、70年代にこんな音が録れていたのかと驚かされる。

 「Songbird」は故クリスティン・マクヴィが残したバラードの名曲だが、当時からの印象では、シンプルなピアノのストロークにアコギの爪弾きが加わった、ゆったりとした楽曲だと思っていた。だがGEN 2の新アルゴリズムで聴くと、実はリンジー・バッキンガムが細かいストロークでアコースティックギターを重ねており、意外にジャカジャカしたにぎやかな曲である事がわかった。

 もう1つ、エアロスミスが70年代に残した「ロックス」も聴いてみた。当時はアナログレコードしかなく、ほぼモノラルなのかと思わせるような音の塊とルーズなギターで聴かせるアルバムで、細かいところが全然分からなかったのだが、これもGEN 2で聴くと、結構打楽器や効果音がオーバーダブされており、ボーカルにショートエコーがかかっていたりと、複雑なレコーディングがされていたことがわかった。

 2人のギタリスト、ジョー・ペリーとブラッド・ウィットフォードがどう弾き分けているのかも全然分からなかったが、ギタートラックがキレイに分離して聞こえるため、実はブラッド・ウィットフォードがほぼほぼ楽曲の大事なところをカッチリ弾いていることがわかった。

 GEN 2は、よく知ってるはずの曲を空間オーディオで聴くのが面白い。それというのも、空間オーディオは昔のサラウンドと違い、「場の再現」にそれほど執着していない技術だからだろう。

 5.1chサラウンドは2000年初頭にDVDの普及から大きく注目されたが、ディスクリートにスピーカーを配置して厳密に音場を再現するのは結構大変だった。まずスクリーンのサイズから視聴位置とスピーカー配置のための半径割り出し、そこに一定の角度で配置する。50インチのテレビだったら配置半径が5mぐらいになり、厳密にやろうとすればとても6畳間には配置できないシロモノだったのだ。だからコンシューマーではだんだん設置も適当になり、元々想定していた音像も定義も崩れていった。

 一方でDolby Atmosや360RAはスピーカーのディスクリートな配置にはあまりこだわっておらず、ヘッドフォン・イヤフォンでデータをレンダリングして仮想空間上に再配置するといった考え方になっている。つまり3DCGでレンダラーが変われば絵も変わるのと同様、レンダラーが変われば音も変わるわけで、それを許容しているからこそ、面白い音表現がどんどん出てくる。GEN 2はそうしたメリットを生かした製品ということがいえる。

 アーム部が折りたためないので、持ち運びにはそれほど向いていないモデルである。家の中でじっくり使うヘッドフォンだろう。空間オーディオの良さがよく分からんという方ほど、メリットが大きいヘッドフォンである。

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