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4400円もするインクペンがクラファンで大人気──滑らかな書き味の秘密、コクヨに聞いた分かりにくいけれど面白いモノたち(1/4 ページ)

» 2023年09月29日 18時54分 公開
[納富廉邦ITmedia]

 コクヨは、いわずと知れた文具の老舗であり、「キャンパスノート」など数々の定番品を発売しているメーカーだけれど、紙を得意とするメーカーというイメージが強く、筆記具の印象は薄い。もちろん、「鉛筆シャープ」や「マークタス」といったヒット商品はあるのだけれど、普段使いのボールペンのヒットがないからかもしれない。

 そのコクヨが、あえて高級筆記具に乗り出した製品が、「WP」シリーズ。ラインアップは、「WP-F100 ファインライター」と、「WP-F200 ローラーボール」。軸の色は、それぞれブラックとシルバーの2色。この価格4400円のペンが、クラウドファンディングで大ヒットしたのは、とてもうれしいニュースだ。

ファインライター(左)とローラーボール(右)。軸の色はこの2色。デザインはキャップを付けた状態では違いは分からない
クラウドファンディングでは目標金額の5400%を達成

 それにしても面白いのは、ファインライターは、水性染料インクの直液式樹脂チップのいわゆるサインペン。ローラーボールもゲルインク以上に粘性の低い水性染料インクを使ったボールペン。つまり、どちらも筆記具としては現在、主流とはいえない方式のペンなのだ。

 「100円、200円の世界でやっていくと、どんどん市場を広げていかないといけなくて、そうなると、こだわったモノ作りは難しくなってしまいまず。ですから3000円から5000円くらいのもので作っていきたいという話を社内でしていたんです。それで、色々シミュレーションして、インクやチップにこだわろうとすると、リフィルは500円くらいになると。その価格のリフィルを入れるなら、軸も良いものが必要だし、それなら3000円から5000円というのが妥当な製品になりそうだと考えたんです」と、コクヨのものづくり第3本部、土岐一貴さん。

 そこから、樹脂チップのサインペン的な製品が生まれるのも外から見ていると不思議なのだが、元々は、「万年筆のような書き心地の筆記具」というものが作りたいという発想があったそうだ。

「コクヨというと紙のメーカーなので、紙と筆記具の組み合わせで、新しい体験を提供できる製品が作れないかと考えたんです。でも、筆記具にはそれほど強くないというところから、協業という話も持ち上がりました。それで、大阪同士ということもあって仲が良いサクラクレパスさんと一緒に作ろうということになったんです」(土岐さん)

パッケージには「Developed in collaboration with SAKURA COLOR PRODUCTS CORP.」というクレジットが入っている

 サクラクレパスといえば、水性ゲルインクのボールペンを最初に作ったメーカーだし、その水性ゲルインクの「ボールサイン」、油性マーカーの「マイネーム」や、水性ペンの「ピグマ」などのロングセラーを持つメーカーでもある。この中の「ピグマ」に、万年筆的な書き心地を実現する可能性を感じたところから開発が始まったという。

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