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4400円もするインクペンがクラファンで大人気──滑らかな書き味の秘密、コクヨに聞いた分かりにくいけれど面白いモノたち(2/4 ページ)

» 2023年09月29日 18時54分 公開
[納富廉邦ITmedia]

「油性やゲルのボールペンは普及し過ぎていて、これから新しいものを作るとなるとあまり向いていないかなと思いました。そこで目にとまったのが、どちらかというと画材的な立ち位置の『ピグマ』だったんです。これは一般的な筆記具としても向くのではないかと考えたんです。それに、万年筆的なペンを考えていたので、樹脂チップを使ったピグマのインクの出方が万年筆に近いのも決め手になりました」(土岐さん)

ファインライターのペン先。樹脂芯なので、当然ペン先にボールチップはなく、芯自体が真っ黒に見える。サインペンと同じような構造なのだ

 万年筆はペン先にあるスリットの隙間をインクが伝わって紙に書くのだが、ピグマのようなマーカーペンも、同じようにインクのタンクから樹脂芯の隙間を通ってインクが伝わる。ならば、芯の素材やインクが出る量などを調整すれば、万年筆のような滑らかさが達成できるかもしれないという仮説が成り立つ。そうして作られたペンだけに、本当に滑らかで軽い書き味に仕上がっている。

 その書き味が気に入って、実は私はこのところ、あらゆる筆記に、このWPシリーズのファインライターを使っている。取材時にサンプルをお借りしていたのだけど、自分用に別途入手したのだった。

 そうして使っていて思ったのが、パーカーの「インジェニュイティ」との相似。考えてみれば、その芯の素材や構造こそ違うものの、どちらも樹脂のペン先からインクが染み出すという仕組みは変わらない。また、水性顔料インクを使っているので、発色も鮮やかで裏写りもしにくいのだ。

 インジェニュイティといえば、筆者が前にTBSの「モニタリング」という番組に出演した際にご一緒した、小泉孝太郎氏が愛用していると言い、それを借りて書いてみた木村佳乃氏も「欲しい」と言ったほどの滑らかな書き味なのだけれど、このファインライターは、全然遜色がないどころか、個人的な好みで言えば、軸が軽くて持ちやすいことや、ペン先が柔らか過ぎないこともあって、こちらの方が好きだったりもする。サインペンにありがちの、筆記時に紙とペン先が擦れて「キュッ」と鳴る感じもほとんどないところも、好きなポイントだ。

上から、ファインライター、某油性ボールペン、某ゲルインクボールペン、某水性染料インクボールペンの筆跡。ファインライターはインク色がブルーブラックなのが分かると思う

 しかし、水性インクはなぜか、あまり好かれていない印象がある。水性という言葉が、水に弱いというイメージがあるからだろうか。しかし、万年筆のインクは大ブームなのだ。そして、このペンは、本当に筆圧がほとんど要らないのに、クッキリと書ける。この力を入れずに濃い線が書けるというのは、手書きにはとても重要ではないかと、私は思っている。

 書いた時に、自分が書いた線がハッキリクッキリ見えるのは、とても気持ちが良い。三菱鉛筆の「ユニボールワン」が世界で最も黒いゲルインクボールペンということでギネス世界記録に認定されたけれど、私がボールペンでは「ユニボールワン」を愛用している大きな要因の1つが、黒に限らず、クッキリした発色の良さなのだ。

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