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Pixel 8だけじゃない、Googleイベントで発表の生成AI機能まとめ

» 2023年10月05日 10時35分 公開
[佐藤由紀子ITmedia]

 米Googleの年次イベント「Made by Google」は、主にハードウェアの新モデルを発表する場だが、2023年版はAI機能の紹介に多くの時間を費やした。本稿ではこのイベントで披露されたAI機能を紹介する。

 毎年イベントの進行役を担っているハードウェア部門トップのリック・オステルロー氏は冒頭で「われわれは、AIをすべての人にとってさらに役立つものにするようフォーカスしている。今日はPixelにとって、それが何を意味するかについて話そう」と語った。

 rick AIについて語るリック・オステルロー氏

Pixel Buds Proの会話検知機能

 同氏はPixelのカメラのAI機能に軽く触れたあと、まずは無線イヤホン「Pixel Buds Pro」の「クリア音声通話」を紹介した。通話相手の周囲の騒音をAIで低減するこの機能は既存のものだが、次期更新でBluetoothスーパーワイドバンドに対応することで大きく改善されるという。また、音楽を聴きながら会話を始めると自動的に音楽を停止して外部音取り込みモードに切り替わる「会話検知機能」も、AIによるものだ。

 Pixel Buds Proについては別記事を参照されたい。


Pixel Foldのデュアルスクリーン「リアルタイム翻訳」の提供開始

 オステルロー氏は次に、折りたたみ端末「Pixel Fold」とともに5月に発表されたデュアルスクリーンを生かした「リアルタイム翻訳」の提供を同日からロールアウトしていくと発表した。これは、片方のディスプレイでユーザーの会話を表示しつつ、相手側のディスプレイに翻訳結果を表示するというものだ。

 dual デュアルスクリーンでのリアルタイム翻訳

Google Homeの録画まとめ機能

 スマートホームアプリ「Google Home」でのAI採用についても語った。Google Homeでは、「Nest Camera」や「Nest Doorbell」などのホームカメラの撮影記録を閲覧できるようになっているが、これに生成AIを導入することで、過去数日間分の記録のまとめ(知らない人が1回映った、荷物が3つ届いた、など)を表示できるようにした。

 home Google Homeアプリのまとめビュー

 この中で荷物が気になる場合は、「Ask about your home」をタップして「荷物は昨日届いた?」などと入力すると、荷物を持った配達人の画像が表示される。さらに「荷物がなくならないように助けて」と入力すると、パッケージが届くとアラートが表示される自動機能を追加するよう申し出る。この機能は、2024年に公開する予定。


Pixel Watch 2のAI採用ストレスマネジメント機能

 同日発表の「Pixel Watch 2」にもAI機能が搭載される。「マルチパス心拍数センサー」「身体反応センサー」「皮膚温センサー」とGoogleのAIアルゴリズムを組み合わせることで、より正確な心拍数計測、「今日のエナジースコア」やストレスマネジメント機能を提供する(一部の機能はサブスクサービス「Fitbit Premium」への加入が必要)。ランニングやサイクリングなどのワークアウトを自動検出するAI機能も追加される。

 fitbit Pixel Watch 2を紹介したのは、今年もFitbitのジェームズ・パークCEO

 また、Fitbitアプリに「今日のランニングはいつもよりきつく感じた。以前のランニングと比較してどうだった?」などと尋ねると、関連性の高いデータの分析結果に基づく答えを表示するようになる。ジェームズ・パーク氏が示したこの例では、睡眠不足もきつく感じた一因の可能性があることも指摘している。この機能は、Fitbit Labsプログラムの一環として来年初頭に一部のテスターに展開していく予定だ。


PixelスマートフォンのAI機能

 Pixel 8/8 Proに搭載の独自プロセッサ「Tensor G3」により、機械学習モデルはPixel 6と比較して10倍複雑になっているという。これにより「他のスマートフォンでは実現できない高度なAI機能を提供できる」。

 オステルロー氏によると、Pixel 8 Proに搭載される生成AIモデルはPixel 7のモデルの最大150倍の計算量で生成AIを実行するという。

 Pixel端末では既に音声でのメッセージの入力、編集、送信が可能だが、ユーザーが話す言語を自動認識し、例えば日本語から英語に切り替えると自動で対応する。

 また、画面にWebページを表示した状態で電源ボタンを長押しすると、そのページのテキストを音声で読み上げる機能も搭載した。読み上げスピードを変えたり、早送りすることも可能。ページを翻訳して読み上げることもできる。

 既に一部の地域で提供中の「通話アシスト」もAIで強化され、相手への代理返答の声がより自然になり、本当に必要な電話かスパムコールかをAIが判断して必要な電話と判断すれば取り次ぐようになった。

 この機能は、Pixel端末に接続したPixel Watch 2でも利用できる。この機能は年内提供の予定。

 カメラ機能もAIとTensor G3で強化される。

 動画でノイズを除去する「音声消しゴムマジック」、フルダイナミックレンジで高品質な動画を自動で撮影できる「動画ブースト」(8 Proのみ)、動画ブーストによる「動画夜景モード」(8 Proのみ)、プロレベルの高度なカメラ制御を可能にする「プロ設定」(8 Proのみ)、集合写真で全員の顔を「いいお顔」に編集できる「ベストテイク」、「消しゴムマジック」の進化形で被写体の位置やサイズを変えることもできる「編集マジック」などの新機能が利用できるようになる(機能によっては“近日提供”のものもあり)。

 なお、ほとんどの機能は端末上で処理されるが、動画ブーストは動画を一旦Googleのデータセンターに送ることになる。



「Assistant with Bard」

 AndroidおよびiOS端末で利用できる「Assistant with Bard」も発表された。名称の通り、GoogleのAIチャットボット「Bard」を「Googleアシスタント」に統合したものだ。テキスト、音声、画像で質問すると、Bardが対応する。GmailやGoogleドキュメントなどへのアクセスを許可すれば、メールの代筆なども可能になる。

 この機能については別記事を参照されたい。向こう数カ月以内にオプトイン体験として提供範囲を拡大していく計画。

 bard

 以下の機能はすぐにリリースされるわけではないものだ。

キーボードアプリ「Gboard」の校正機能とスマートリプライ

 キーボードアプリ「Gboard」がクラウド上のLLM(大規模言語モデル)を使ってタイプミスの修正だけでなく、文法的な誤り、不適切な句読点まで修正する(英語版)。

 Pixel 8 Proでは、端末上のLLMでGboardのスマートリプライ(返信する内容の候補を提示する機能)が使えるようになる。

Webページのコンテンツ要約

 Pixel端末で表示しているWebページのコンテンツを要約する機能も追加予定だ。Webページを表示した状態で「要約」ボタンをタップするだけで、そのページの内容を箇条書きにまとめてくれる。

「レコーダー」にも要約機能

 音声を録音し、リアルタイムでテキスト化するモバイルアプリ「レコーダー」にもコンテンツ要約機能が追加される。この機能は向こう数カ月中にPixel 8 Proで利用可能になる見込みだ。

 recorder 長い記者会見の録音も箇条書きに要約してくれるらしい

Pixel 8 Proのフォトアプリに「Zoom Enhance」

 Pixel 8 Proの端末上に搭載するカスタム生成画像モデルにより、「Zoom Enhance」が可能になる。これは、写真を拡大すると画像の細部が自動的にシャープになるというものだ。撮影段階でズームしていなくても、くっきりした拡大画像に編集できる。この機能は12月の「Feature Drop」で提供する計画だ。

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