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全スマホをタッチ決済対応にする方法 カメラでNFCリーダーを動画撮影すると決済完了Innovative Tech

» 2023年10月17日 08時00分 公開
[山下裕毅ITmedia]

Innovative Tech:

このコーナーでは、2014年から先端テクノロジーの研究を論文単位で記事にしているWebメディア「Seamless」(シームレス)を主宰する山下裕毅氏が執筆。新規性の高い科学論文を山下氏がピックアップし、解説する。

Twitter: @shiropen2

 香港理工大学に所属する研究者らが発表した論文「MagCode: Bringing NFC Feature to All Smartphones」は、近接無線通信(NFC)に非対応のスマートフォンでも、カメラでNFCリーダーを動画撮影するだけで決済が可能なシステムを提案した研究報告である。

 NFCはスマートフォンでの支払いの主流技術となっている。この技術はApple PayやGoogle Payなどのスマートフォンと、店舗の決済端末との間で短距離のデータ交換を行うもので、非接触型クレジットカードの普及と共に多くの店舗でのNFC利用が増えている。

 しかしながら、現在市場に出ているスマートフォンの約半分はNFCモジュールが搭載されていないか、またはセキュリティ上の理由でNFC機能が使えない状態となっている。特にiPhoneでは、セキュリティの観点からサードパーティーの支払いアプリでのNFC機能が通常無効化されている。全世界の人々のうち、わずか20%しかNFCの恩恵を享受していない。

 NFCが搭載されていないスマートフォンの問題を解決するために「MagCode」という新しい技術を開発した。この技術は、NFCを搭載していないスマートフォンでもNFCと同等の支払い体験を提供することを目的としている。

 具体的には、スマートフォンのカメラをNFCリーダーに近づけることで、カメラの映像上に特定の縞模様を表示。この縞模様はデータ伝送のためのもので、それを読み取ることでNFCと同様のデータ交換を実現する。

スマートフォンでNFCリーダーを動画撮影している様子。画面には撮影中の縞模様を映し出す

 この方法は、NFCリーダーが生み出す磁場がスマートフォンのCMOSイメージセンサーに無害な磁気干渉(MI)をもたらす現象に着想を得たものである。具体的には、スマートフォンのカメラをNFCリーダーに近づけると、このMIの影響で、カメラの画面上にバーコードに似た縞模様が映し出される。

実験のセットアップ

 NFCリーダーのプロトタイプを作成し、11種類のスマートフォンでのテストを実施したところ、全機種で非常に高い性能が確認された。特に、磁気センサーベースの方法に比べて、データ伝送速度が58倍も速いことが判明した。

Source and Image Credits: Donghui Dai, Zhenlin An, Qingrui Pan, and Lei Yang. 2023. MagCode: Bringing NFC Feature to All Smartphones. In Proceedings of the 29th Annual International Conference on Mobile Computing and Networking(ACM MobiCom ’23). Association for Computing Machinery, New York, NY, USA, Article 116, 1-3. https://doi.org/10.1145/3570361.3614079



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