国や企業などに要望を伝えるための署名活動が変化してきている。以前は、街頭で紙を使って集めるものだったが、ここ最近はオンライン署名が活発化。気軽に参加できることもあり、数十万など大量の署名が集まるケースも出てきた。
その受け渡し方法が新たな課題になっている。紙に印刷して手渡すのが今でも主流ではあるが、デジタルデータのアナログ媒体への印刷は紙の無駄でもあり、大量の紙を管理する手間と労力が、渡す側にも受け取る側にもかかってくる。
最近は、署名データをUSBメモリに格納して渡す例も出てきた。ただ、USBメモリには、情報漏えいなどのセキュリティリスクも指摘されている。大量の署名を安全に受け渡すにはどうすればいいのか。国内外の事例から考える。
9月末、インボイス制度の中止を求める有志団体「STOP!インボイス」が、オンライン署名サイト「Change.org」で54万筆超の署名を集め、USBメモリに格納して首相秘書に手渡したことが話題になった。
同団体は署名運動をスタートした2021年12月、3万筆超の署名を財務省に紙で提出。この時、発起人の自宅のプリンタでA4用紙×800枚分の署名を印刷したが「プリンタのトナーも紙も切れて大変な思いをした」という。
54万筆はその18倍。単純計算で1万4400枚分(800枚×18)に印刷することになる。A4用紙1枚の重さを約4gとすると、1万4400枚×4g=57.6kgだ。家庭用プリンタで印刷すると時間もコストもかかり、手ではとても持ち切れない量になる。
そこで同団体は、署名簿をUSBメモリに格納して渡すことにした。首相秘書には事前にUSBメモリで渡すことを電話で知らせ、了承をとったと説明する。
首相秘書とのやりとりは、こんな内容だったという。「(首相秘書に)『(署名簿は)どんな様式ですか?』と聞かれたので、『USBです』と答えたところ、『ああ、そうなんですね。段ボールがたくさんくるのかと思いました(笑)。大丈夫ですよ』と言われました」(STOP!インボイスの担当者)。
だが、USBメモリを渡したことがSNSで議論を引き起こした。USBメモリはウイルスが仕込まれていればサイバー攻撃の端緒になることもある他、受け渡しの過程で紛失のリスクもある。このため「署名を渡す手段としてふさわしくない」「かつて、首相が受け取り拒否していたのは当然」などと一部で批判されたのだ。
STOP!インボイスの主張によると、首相秘書は事前にUSBメモリだと知った上で「大丈夫ですよ」と言って受け取ったはず。では、首相秘書はUSBメモリのセキュリティリスクについてどう考えていたのか。
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