このコーナーでは、2014年から先端テクノロジーの研究を論文単位で記事にしているWebメディア「Seamless」(シームレス)を主宰する山下裕毅氏が執筆。新規性の高い科学論文を山下氏がピックアップし、解説する。
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スロベニアのヨージェフ・ステファン研究所Humar Labに所属する研究者らが発表した論文「Smectic and soap bubble optofluidic lasers」は、せっけん泡(シャボン玉)を光学的な共振器として使用し、レーザー光を放出する技術を提案した研究報告である。
せっけん水と蛍光染料を混ぜた泡に光を当てることで、非常に小さなレーザーを作ることができ、これらは極めて微小な圧力変化や電場の変化に対して敏感であることを示した。
この研究では、ミリメートルサイズのせっけん泡をレーザー光で照らすことで、泡がレーザー光を放出する現象を示す。せっけん溶液に毛細管を浸して泡を作り、毛細管内の空気圧を上げて泡を膨らませる方法で、0.4mmから4mmのサイズの泡を作成できる。泡の膜の厚さは、せっけん泡の場合100〜800ナノメートルの範囲である。
泡がパルスレーザーで照らされると、内部で光が循環する現象が起こり、泡からレーザー光が発生する。泡を異なる位置で照らすことで、異なるレーザー光の放出パターンが観察できる。
本来レーザーは光を増幅するための共振器として鏡を使うが、この泡レーザーは、光を反射し内部で循環させる泡自体が光の共振器の役割を果たす。
せっけん泡には蛍光染料が添加されており、これが光を増幅させている。せっけん泡に光を照射すると、染料分子が光を吸収し、その後、光を放出する。この放出される光が泡の内部で反射し、増幅されることでレーザー光を生成する。
せっけん泡がレーザー光を放出する原理は、ウィスパリングギャラリーモード(WGM)現象に基づいている。WGMは、泡の内側で光が周回し、特定の条件下で共鳴することにより、レーザー光が増幅される現象である。
せっけん泡の代わりにスメクティック液晶を用いた泡レーザーの実験を行った。これらの泡レーザーは、せっけん泡よりも安定性が高く、長寿命であることを示している。また、非常に高い感度を持ち、微小な圧力変化や電場の変化を検出できることが分かっている。これにより、圧力や電場のセンサーとしての利用が検討されている。
Source and Image Credits: Zala Korenjak and Matja? Humar. Smectic and soap bubble optofluidic lasers.
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