ITmedia NEWS > 製品動向 >
STUDIO PRO

クラウドスイッチャーは放送局に浸透するか ソニー担当者に聞く「新たな一手」小寺信良の「プロフェッショナル×DX」(3/4 ページ)

» 2023年12月21日 19時00分 公開
[小寺信良ITmedia]

つながることで生まれる多様性

――会場のデモでは、すでに既存スイッチャーのコントロールパネルであるICP-Xシリーズでオペレーションできているところを拝見しました。とはいえ、既存スイッチャーはM/E型ですよね? 一方ソフトウェアスイッチャーはレイヤー型だと思いますが、これを既存スイッチャーパネルのオペレーションに置き換えるのは結構大変なのでは?

(DSC05587.JPG)ブースでは24クロスポイントの「ICP-X1224」で操作していた

前川 確かにおっしゃられたように、レイヤーの数をキーヤーの数と考えると、これまでのハードウェアスイッチャーよりも機能が多くなる可能性はあります。ただパネルのスイッチはアサイナブルになってますので、まずは必要なものをアサインしていただいて、あとは別のボタンにもアサインするといった形で機能をカバーしていく形で考えています。

 まずは使い慣れているICP-Xシリーズの操作になるべく合わせるような形でいったんご提示させていただいて、いろいろヒアリングさせてもらってから、次を考えていこうかなと思っています。

――私もレイヤー型のハードウェアスイッチャーを使ったことがある最後の世代になりつつあるんですけど、やはりレイヤー型ハードウェアパネルは難しいと

前川 ソフトウェアのGUIで操作する方はレイヤー型でどんどん行くと思うんですけど、M2L-Xはハードウェアスイッチャーの「MLS-X1」ともハイブリッドで動かせるようになっています。こうした組み合わせではコンセプトが違うと使いにくいので、M/E型に合わせるほうがいいかなと。

(DSC05592.JPG)リソース共有可能なハードウェアスイッチャー「MLS-X1」

 ただNETWORKED LIVEのコンセプトでもありますけど、ハードとソフト、オンプレミスとクラウド、それからオペレーションのところも、どう選んでも同一でできると。レイヤー型っていうのをどう表現するかということになってくるんですけども、おそらく従来型のようなハードウェアパネルではなくて、GUIと併用するようなハードウェアパネルっていうのはやりたいなと思ってます。

――M2L-XとMLS-X1のハイブリッド化ですが、2台のスイッチャーを1つのパネルから操作できるようになっています。もともとMLS-X1はハードウェア同士で拡張できる構造でしたが、今回のようにソフトとハードのスイッチャーが連携するメリットとはどういうところにあるでしょうか

前川 われわれもまだヒアリングしてる途中ですけども、考えられるのは競技場のところから1番近くクラウドにカメラ映像を何本か打ち上げて、そのプリスイッチングみたいな形で、ソフトウェアスイッチャーを動かし、少ない帯域で送れるようにした上で、本局の方で最終的なプログラムを作るというような形ですね。その場合でも、ソフトウェアスイッチャーと局側のハードウェアスイッチャーを1つのパネルから動かせるんで、プリプロダクションのために制作スタッフを現地に送らなくて済むとか。

(DSC05596.JPG)アドオンで操作できる小型パネルも参考展示された

 あとは特番とかでもうちょっと入力が必要だよねとか、M/E段が足りないって時に、これまでは大型のスイッチャーに差し替えなければならなかったところ、その時だけソフトウェアスイッチャーを足していただいて、上流段M/Eみたいな形で置いていただければ、仮想的に大きなスイッチャーが作れるっていうこともあります。まずはそうした特別な大規模イベント向けや、遠隔のプリセッティングだったりというところを想定してます。

――実際に放送まで行う事を考えると、スイッチャーだけがあればいいわけじゃなくて、ミキサーやグラフィックスなどもクラウドでつないで行かなければならないですよね。現時点は他社のソリューションと組むしかないわけですが、具体的にはどこの何と組めるんでしょうか?

前川 具体的にどこと決めているものはないです。グラフィックスとかマルチビューワー、オーディオミキサーは内部にもありますけど、もっとチャンネル使いたいと行った場合には他社さんのものを使って頂く。

 今テストしている、もしくはデモで使っているところは、マルチビュワーはTAG Video Systems社のもの、オーディオミキサーはWaves Audio社のものを主に使っています。グラフィックスに関しては、NDIでアルファチャンネル付きのものを入れたり、HDMI5で入れられればつながりますので、インタフェースさえ取れれば基本的にはメーカーを選ばずにお使いいただけます。

――ソフトウェアベースで多種多様なツールを一社でそろえているということでは、GlassValleyのAMPPが先行事例としてありますが、将来的にはソニーでもあらゆるソリューションを内製していく方向になるんでしょうか

前川 いろいろやってはいきたいですけど、全部ソニーで固めることは考えず、あくまでもオープンでいきたいと考えてます。そもそもお客様が使いたいものもございますし、われわれが持っていないソリューションもありますので。まずはオープンにしておいた上で、必要に応じてというか、ここはわれわれで作った方がいいなっていうところは出していきたいですけど、全部ソニーでやるつもりはないですね。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.