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遠近両用メガネなのに見え方は“普通” AIを使ってパーソナライズする累進レンズ「Varilux XR」を体験した分かりにくいけれど面白いモノたち(5/7 ページ)

» 2023年12月26日 12時15分 公開
[納富廉邦ITmedia]

 それにeyecodeという、目の大きさのデータを計算に入れるオプションも用意されている。近視の人は眼軸が長くなり、遠視の人は眼軸が短くなるという傾向はあるが、一般的にはこの傾向値も考慮されずに「標準値」を固定数字として計算されている。ところが実際に測ると、そう単純なものではないことが分かってきた。

 ということで、実際の目の大きさもデータとして取り込んでレンズを作ることで、レンズの度数をきちんと生かせる設計にするというオプションだそうだ。これは、選んだフレームにセンサーを取り付けた状態で実際にかけて、XやXRシリーズを扱っているメガネ屋さんに設置された機械で計測する。

「NVB」(Near Vision Behavior)の計測は、センサーを付けたフレームを掛けて、このようにiPadを持って行う

 XR fitの上位バージョンになるのが「XR track」。これには「NVB(Near Vision Behavior)」というオプションが付く。これは、近くを見る時の目の動きを計測して設計に組み込むオプションだ。この計測がなかなか興味深いものだった。

 普段、本やタブレットを持つ時のようにタブレットを手に持って、センサーを付けたフレーム(実際にXRシリーズのレンズを入れるフレームとして選んだもの)を掛けた状態で、タブレット上に表示される青い点を目で追うだけなのだ。裸眼で見ることになるので、大きな青い点になっている。

NVBの検査に使うアプリの画面。この青い点がグレーの点上を左から右、上から下に動くのを目で追うだけで終了する

「この検査では、4つの項目を測っています。1つは下方回旋。目を下に下げる量ですね。これ苦手な人もいて個人差が大きいんです。2つめはタブレットとの距離です。普段、文字などをどのくらいの距離で見ているのかを計測します。3つめはタブレットを持った時に、タブレットが身体に対して左右、どちらにどのくらい傾けるのかを計測します。4つめは、視線移動僻です。目を動かして見るのか、顎を動かして見るのか、どのくらいの位置だと目で、どのくらいの位置だと顎を動かすのかといったことを測ります。このテストで、累進レンズの累進帯長、つまりどれくらいの幅の中に度数変化をさせるかを決めます。従来のレンズも、累進帯長を選ぶことは出来たのですが、フレームの幅やそれまで使っていたレンズ(の大きさ)や累進帯長などから選ばれていて、その累進帯長にしたのかという根拠は薄かったんですが、このテストによって、きちんと根拠のある数値が出せるようになりました」(井上さん)

「NVB」の検査結果は、このように表示される。かなり細かく、視線や顔の移動、タブレットを持っている角度などが記録されているのが分かる

 さらに、このテストから、どこに近くを見るゾーンを配置するか、どういう度数を分布するかといったことも導き出せるのだそうだ。このNVBのオプションがあると無いとでは手元を見る快適度が25%くらい違ってくるらしい。

 ただ、人によっては動くものを上手く目で追えない場合があるそうで、そういう方には「XR 4D」を勧めるのだという。これは、フィッティング・パラメーターに加えて、利き目が左右どちらなのかをパラメーターに含めるDE(ドミナント・アイ)オプションが設計に含まれる。動いているモノを見たり、運転中のような、自分が動きながらモノを見たりする場合、利き目の方が必ず先に反応するという人間の目の特性を、レンズの設計に生かすためのオプションだ。

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