そこで得られたデータを使うと、なぜ視線移動に対応した累進度数レンズができるのか。どうやら、見えづらい部分をレンズのどこに配置するかということを、個々人の目に合わせて実現しているということらしい。
累進レンズの度数が切り替わる部分を、あまり目が行かない部分に配置し、遠くや近くを見る時の目の動かし方に合わせて、最適な度数を配置するということなのだろう。とりあえず、筆者は実際に使っている実感も含めて、そんな風に理解した。
理解はしたものの、例えば、少し遠くにある本棚の下の方を見て、そのまま上に視線を動かしても、普通に棚の中が見えるという状況が不思議であることには変わりはない。どこかで度数は切り替わっているはずだし、それはある程度は規則性があるはずなのに、なんとなく目を向けたところがそれなりに見えるのだから。この感覚は、従来の累進レンズでは、絶対になかった体験なのだ。
そういう見え方を実現するには、従来の度数を測る検査だけでは当然足りない。前回、Xシリーズを作る時も、かなり色々な検査を行ったが、XRシリーズでも、様々な検査によって、より個人にチューンアップしたレンズを製作している。元々、メガネというのはその人に合わせて作られるオーダーメードの製品なのだ。この、人それぞれの目や目の動きに合わせてレンズを作る、パーソナライズを重要視している点こそが、バリラックスのレンズの大きな特長になっている。
XRシリーズには、一番スタンダードといえる「XR fit」という製品がある。これは、レンズと目の位置関係であるフィッティング・パラメーターをレンズの設計に含めるもの。実際の角膜頂点距離などが、選んだフレームのメガネを掛けた場合、どういう位置関係になるのか、レンズの角度はどうなるのかといった、フレームとのフィッティングをレンズ設計に含めてパーソナライズする製品だ。
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