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植物の根に“電気刺激”、通常より50%速いペースで成長 「電子土壌」をスウェーデンの研究者らが開発Innovative Tech

» 2024年01月09日 08時00分 公開
[山下裕毅ITmedia]

Innovative Tech:

このコーナーでは、2014年から先端テクノロジーの研究を論文単位で記事にしているWebメディア「Seamless」(シームレス)を主宰する山下裕毅氏が執筆。新規性の高い科学論文を山下氏がピックアップし、解説する。

Twitter: @shiropen2

 スウェーデンのリンショーピング大学に所属する研究者らが発表した論文「eSoil: A low-power bioelectronic growth scaffold that enhances crop seedling growth」は、水耕栽培用の新しい電気伝導性の栽培基盤“電子土壌”を提案した研究報告である。「eSoil」と名付けた基盤に電気刺激を与えることにより、植物の成長速度を向上できるという。

水耕栽培でeSoilを電気刺激している様子、苗の下にある黒い塊がeSoil

 通常、水耕栽培では非生分解性でエネルギー集約的な製造プロセスを持つ鉱物ウールを栽培基盤として用いるが、eSoilは異なるアプローチを採用している。最も一般的な生体高分子であるセルロースと導電性ポリマーPEDOTの混合物で作ったeSoilは、その組み合わせが新しいわけではないが、植物栽培用や植物インタフェースの作成に用いられるのはこれが初めてである。

大麦の苗とeSoil(黒い塊)が接触している様子

 実験では、eSoilを通して電気刺激を受けた大麦の苗が、通常の成長速度よりも約50%速く成長することを示した。これまでの研究では根の刺激に高電圧が使っていたが、eSoilは低電圧で済むという大きな利点を有している。この方法で苗が窒素をより効率的に処理することを確認しているが、電気刺激がプロセスにどのように影響するかについては、まだ明らかになっていないという。

Source and Image Credits: eSoil: A low-power bioelectronic growth scaffold that enhances crop seedling growth, Proceedings of the National Academy of Sciences(2023). https://dx.doi.org/10.1073/pnas.2304135120



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