米Appleは1月25日(現地時間)、欧州連合(EU)が3月7日に発効させるデジタル市場法(DMA)を順守するために、EU圏内でiOSアプリをリリースする開発者に対するルールを変更する計画を発表した。この変更で、EU圏内では公式アプリストアApp Store以外でのiOSアプリ提供(いわゆるサイドローディング)を認める。この変更は、3月配信のiOS 17.4で適用される予定だ。
サイドローディングが可能になるといっても、サードパーティのWebサイトからゲームなどのアプリをダウンロードできるようになるわけではない。
EU圏内のiOS 17.4搭載端末ユーザーは、Appleが「alternative app marketplaces」と呼ぶApp Store以外のアプリストアアプリ(以下「マーケットプレイスアプリ」)をAppleの要件を満たすWebサイトからダウンロード、インストールし、ここからiOSアプリをダウンロードできるようになる。
こうしたマーケットプレイスアプリは、Appleの承認プロセスを通る必要がある。
また、ユーザーがマーケットプレイスアプリをダウンロードしようとすると、警告画面が表示される。それでもユーザーがマーケットプレイスアプリをインストールすると、App Storeにはないアプリでもダウンロードできるようになる。ユーザーは、マーケットプレイスアプリを端末のデフォルトアプリストアに設定することもできる。
iOSアプリは必ずAppleによる「Notarization」(日本では「公証」)を受ける必要がある(AppleはmacOSアプリで公証を義務付けている)。
公証は、プラットフォームの整合性とユーザーの保護(マルウェアなどの検出など)に重点が置かれており、自動チェックと人間によるレビューが組み合わされている。
開発者は、従来どおりApp Storeでのみアプリを配信するか、新たなルールをオプトインするかを選択できる。
従来どおりの場合は、何も変わらず、アプリ内決済に30%あるいは15%の手数料をAppleに支払う。なお、この場合は「Core Technology Fee」(後述)を支払う必要はない。
新たなEU向けルールには、さらに2段階の選択肢がある。App Storeに留まったまま決済方法のオプションをユーザーに提示するか、さらにマーケットプレイスアプリでアプリを配布するようにするか、だ。いずれの選択肢でも、条件によって別途Core Technology Fee(後述)を支払う必要がある。
前者の場合、App Storeの支払いシステムを使う場合の手数料は20%あるいは13%になる。Appleのシステム以外の支払い方法(リンク先のWebサイトなど)を使うと、手数料は17%あるいは10%になる。
後者の場合、マーケットプレイスアプリはApp Storeでは公開できないので、Appleが求める条件を満たすサイトで提供する必要がある。マーケットプレイスアプリで発生した収益については、Appleへの手数料は不要だ。(ただし、後述のCore Technology Feeは必要。)
開発者は、新ルールを選択した場合、アプリをApp Storeでのみ提供することも、App Storeとマーケットプレイスアプリの両方で提供することも、App Storeからアプリを削除してマーケットプレイスアプリでのみ提供することもできる。いずれの場合もCore Technology Feeは必要だ。
EU圏内で年間100万回以上インストールされる人気アプリについては、App Storeからかマーケットプレイスアプリからかに関わらず、年間インストールごとに0.50ユーロ(約80円)を徴収する「Core Technology Fee」(以下「CTF」)を設ける。
Appleは、これは「開発者がアプリを構築してユーザーと共有できるようにするためにAppleが投じたコストを反映している」と説明している。
新しいルールを選択したすべての開発者がCTFの対象になる。CTFはすべてのiOSアプリが対象なので、無料アプリにも適用される。
Appleは、開発者の99%以上が新しい条件により「Appleに支払うべき料金を減額または維持」するとしている。
Appleは開発者に、新ルールを適用するかどうか判断するためのツールも提供している。
マーケットプレイスアプリの提供に加え、もう1つのDMA対策として、EU圏内でiOS 17.4上のSafariを最初に起動すると、代替ブラウザ選択画面が表示されるようにする。
さらに、Appleは同日、EU圏内だけでなく、グローバルでストリーミングゲームのダウンロードも可能にすると発表した。
AppleはEUにより、独占的なデジタルプラットフォームを運営する6社の「ゲートキーパー」の1社に選ばれている。
【更新履歴:2024年1月28日午前8時40分 開発者向けの選択肢についての部分が不正確だったため、修正、加筆しました。】
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