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たった8色で油彩のような表現も──人気画家YouTuberが監修した「アートクレヨン」の新しさ分かりにくいけれど面白いモノたち(5/6 ページ)

» 2024年01月26日 11時21分 公開
[納富廉邦ITmedia]

 ただ、一番大変だったのは、ラボで手作りで試作品を作って、柴崎先生のオッケーももらって、いいものができたと思っても、そのまま量産化できるかというと、なかなかそうはいかなかったこと。三浦さんのお話を伺っていると、化学製品に近いイメージがあるので、レシピができ上がってしまえば、あとは量産も可能になりそうな感じだったのだが、全然、そういうことはないらしい。

量産時に出てしまう不良品は、こういう感じになっているそうだ。完成品と見比べてほしい
完成した量産品

 「製品になったものは、表面も円滑で見た目がキレイなものが並んでいますが、現場ではキレイじゃないものが結構できちゃうんです。きれいな円柱にならず、割れや穴が開いてしまったり。どういう条件で作ればキレイにできるのかという工程にかなり時間がかかりました。それも色ごとに違うので、本当に作ってみないと分からないんです。ラボで私が作ったものと同じ品質のものができるかドキドキしながら検査していました。表面がキレイでも切り口はキレイではなかったり、とにかく、全色とりあえず一度量産していく必要があったのが、一番大変でした」

 量産に於ける大変さというのは、中々外からは分からないものだ。「設計には設計の、量産には量産の大変さがそれぞれにあって、そこは繋がるようで繋がらないかなと思います」と三浦さんは振り返る。

 実際に使ってみて、またこうやって話を聞いてみると、よく考えられた、しかも、今までにない新しい画材と言ってもいいのではないかと思うのだが、友人のプロの画家などに使ってもらった時の感想としてよく聞いたのは、「新しい、今まで使ったことがない感じの画材だから、とにかく一箱か二箱を使い切らないと、どういう画材なのかの把握は難しい」という話だった。

 実際、使ってみるとすぐに分かるのだけど、とにかく描いているとどんどん減って短くなるのだ。特に、重色を試そうと、厚く層で塗っていくとどんどん減る。中間色を作るのに多用する白の減りがまた早い。

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