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たった8色で油彩のような表現も──人気画家YouTuberが監修した「アートクレヨン」の新しさ分かりにくいけれど面白いモノたち(2/6 ページ)

» 2024年01月26日 11時21分 公開
[納富廉邦ITmedia]

 「柴崎先生からの要望として、『彩度がとても高い色を』『単色で使うより混色など様々な技法が使えるものを』『今までに無いしっとりしたタッチのものを』という形でお話を受けたんです。そういう要望だと、ぺんてるでは『オイルパステル』と『クレヨン』を両方作っているのですが、『オイルパステル』寄りのものを作るんだなという印象でした」と三浦さん。

 それで、専門家用の商品である「専門家用パス」というパステルの中から柴崎氏に色の候補を挙げてもらって、それらの彩度を高めに仕上げる形でプロトタイプを作ったのだそうだ。

 柴崎先生に使ってもらったところ、「モノ自体は悪くないし、色や書き味も良いのだけど、色が重ねられないんだよなあと仰って。油絵のような、色を重ねることで厚みのある表現をしたいということなんですね。でも、これが難しい。そういうことだと、オイルパステルだけではなく、クレヨンの要素も必要になるんです」と三浦さんは振り返る。

ぺんてるには、従来品として、児童用クレヨンなら「ぺんてるくれよん」、オイルパステルなら「専門家用パス」といった製品がある。写真は「専門家用パス」の25色セット「PTA-25D」と、児童用の「ぺんてるくれよん」12色セット「PTCR-12」

 パステルとクレヨンは、どちらも油とワックスと顔料で作られていて、違いは成分の比率なのだそうだ。オイルパステルはクレヨンより油が多く、クレヨンはオイルパステルよりワックスが多い。使う油もワックスも種類は色々あるけれど、基本的には同じものを使っている。

 「オイルパステルは常温では液体である油分が多いので、少しワックスが入っていても油が持つ混ざりやすさが優位に働きます。だから、色が混ざりやすいんですね。クレヨンは逆に常温で固形であるワックスが多いので、一度塗ったところに別の色を塗った時、混ざるというより重なっていくんです」と三浦さん。

こんな風に、描いた部分を指などでこすると、隣り合った色を混ぜることができる。これは、オイルパステルでは比較的よく使われる技法でもある

 これは、油絵を描く時、色を混ぜる時は絵具をチューブから出してそのまま混ぜるけれど、重ねる時は下に塗った絵具が乾いてから重ねるということと同じメカニズムなのだ。言われてみれば、とても明快な違いがあった。

 実は、パステルにも、オイルパステル・コンテパステル(ソフト・パステル、ハード・パステル)などの種類があり、例えばコンテ・パステルは油分を使わず、顔料を粘土で固めたようなものだそうで、混色やぼかし、水でのばすことを得意とする画材なのだが、ここでは詳細は割愛する。

 問題は、油分が多ければ混色が得意だし、ワックスが多ければ重色が得意という相反する要素を、一つの製品の中でどのように両立したのかということだ。

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