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「Apple Vision Pro」レビュー 渡米してまで買う価値はあったのか(3/3 ページ)

» 2024年02月05日 13時00分 公開
[西田宗千佳ITmedia]
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「VR機器」とは思わないほうが良い

 その結果として実現できるものはなにか?

 他のVR機器と比べるのは正しくないように思う。

 筆者が考えるに、VR(XR)の進化方向には2つのベクトルがある。

 1つは「世界への没入」。周囲を目に見えている現実とは違うものにするもの。別の言い方をすれば「異世界旅行」であり、ゲームが理想としてきた世界だ。

 そしてもう1つが「空間ディスプレイ」。

 周囲の空間に対し、好きな位置にウインドウやオブジェクトを置き、その世界を道具として改変していく技術だ。従来、ディスプレイという技術は「四角い平面の中」を書き換えるものであったが、空間ディスプレイでは自分に見えている領域すべてを書き換え可能にする。

 「没入」はその結果もたらされるものではあるが、ディスプレイとし、実景やバーチャルな世界を活用する。

 前者と後者は地続きであるものの、実現できる体験は異なってくる。アップルのいう空間コンピューティングとは後者を軸にした世界であり、Vision Pro自体が「空間をOSで制御する」ことを強く意識した製品ではないか、と思う。

ウィンドウやアイコンを「タップ」して操作する

進化したハードがあって初めて実現するもの

 そうした世界を実現するには、「高品質なディスプレイ」「高精度な位置の認識」「高精度な視線認識」など、多彩な技術が必須となる。それらは現在も簡単な技術ではなく、最先端のものを組み合わせる必要がある。

本体内には高精度な位置認識のために複数のカメラが組み込まれている

 従来の機器は「多数に売ってプラットフォーム基盤を整備する」ことを目的としており、結果とし、使えるパーツのコストに制限があった。また、Appleのように「iPadで培った技術や他製品との連動」をシンプルに流用するわけにもいかない。

 Vision Proの魅力は、高価なパーツを効果的に組み合わせて、満足度の高いハードウェアに仕立てているところにある。

 量産の傾向によっては変わるだろうが、価格が安くなるには、マイクロOLEDディスプレイからプロセッサーまで、幅広く採用が進んで価格が下がるのを待つ必要が出てくるだろう。少なくともそれには、数年の時間が必要となりそうな雲行きだ。

 購入のハードルは高いが、未来を確かめてみたい人は、日本版が出るのを待って購入を検討する価値がある。

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