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終わるようで終わらない「AMラジオ」の世界小寺信良のIT大作戦(1/3 ページ)

» 2024年02月13日 15時00分 公開
[小寺信良ITmedia]

 2月1日から、一部のAMラジオ局が放送を休止することがわかった。これは、「停波」ではない。最長で来年1月末まで実際に放送を止めてみて、その社会的影響を検証する事になる。

 ラジオ放送は、リスナーの減少による経営難が指摘されて長いわけだが、特にAM放送はFM放送に比べると、放送インフラのコストが高いことが問題となっていた。2019年3月には、民放連がAM放送をFM放送へ転換したいという要望書を総務省に提出、有識者会議にて検討、容認の運びとなった。

 つまり多くのAM放送は、そのまま廃業するわけではなく、今後はFMに電波を移して継続するということであり、2028年までには全国44の民放AMラジオ局がFMへの転換を目指している。2019年の議論段階ではまだ10年あるネという話だったが、もうあと4年である。1年がかりの本格的検証に入って当然のタイミングではある。

 FM放送に転換すると言っても、今のFM放送にそんな空きがあるのか、という話になる。東京千葉埼玉圏で受信できるFM局をざっと列挙すると、InterFM897、TOKYO FM、J-Wave、BayFM78(千葉)、NACK5(埼玉)、ヨコハマFM(神奈川)と6局もある(放送大学のFM放送跡地は現在臨時災害放送局に割り当てられている)。

 しかしそこは良くしたもので、実は総務省では2014年からAM放送の難受信対策として、FMラジオ周波数を拡張し、そこでAMのサイマル放送を認めた。従来のFM放送の周波数は76.1〜90.0MHzだったが、これの上の方を拡張して、76.1〜94.9MHzとした。これを「ワイドFM」と呼ぶ。

 AM局のFM移行は、この周波数帯域の拡がったワイドFMを活用すれば可能、というわけである。

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