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「うるう秒」はまだ終わっていない 焦点は“新たな協定世界時”の導入時期(2/2 ページ)

» 2024年02月29日 18時36分 公開
[芹澤隆徳ITmedia]
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最長11年間は油断できない?

 NICTは、情報通信を専門とする日本で唯一の国立研究機関であり、公的サービスの一環として電波やNTPサーバを介し、日本標準時(JST)を提供している。このため、うるう秒調整が行われる場合には、総務省と協力してその周知や準備を主導する立場にある。

 NICT時空標準研究室の井戸哲也室長は「22年のCGPM(国際度量衡総会)の決議4、および23年のWRC-23(ITUの無線通信部門)の決議655により、35年までに新たなUTCが導入されることは決定しました」と説明。ただし、「遅くとも35年の新たなUTC導入までは現行のUTCが用いられるため、その間にうるう秒調整が起こる可能性はあります」と指摘する。新たなUTCの導入時期はまだ決まっておらず、最長で今後11年間は、まだうるう秒調整が発生する可能性もあることになる。

 今後は「UT1に対するUTCの時刻差“UT1-UTC”の最大値の決定と供給方法についての議論、新たなUTCの導入時期についての議論などが行われるものと思われます」という。

 協議の進み方次第では、新UTCの導入が前倒しされることもあるかもしれないが、現在のUTCが導入された1972年以来、うるう秒調整は27回あった。今年の7月は調整を行わないことが既に決まっているものの、直近でうるう秒調整を実施した17年1月から7年が経過している。過去52年間で最も期間があいたのは、1999年と2006年の7年間だった。

NICT日本標準時グループのページでは7月にうるう秒調整は行わないと告知している

うるう秒調整がなくなっても大丈夫?

 導入時期はまだ見えないが、新たなUTCとなって、うるう秒調整がなくなった時、IT業界やわれわれの生活に何か変化はあるのだろうか。NICTの井戸室長は「少なくとも100年間は連続な時系となる予定ですので、その間は(うるう秒調整の)対応の必要がなくなります」という。

 「現行のUTC導入から50年余りで、うるう秒調整は27回でした。このことから100年でUT1と1分程度の差が生じる計算となりますが、一般生活の中ではこの程度の差は問題ないと思われます。ただ、衛星管制や天文、測地など宇宙や地球の相対的な位置関係が必要な分野では正確な『UT1-UTC』の値を常時入手して調整を行う必要があります」

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