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「GPT-4超え」とうわさのAI「Claude 3」を試す 仕事は任せられる? 若手記者の所感(2/2 ページ)

» 2024年03月08日 10時00分 公開
[吉川大貴ITmedia]
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今度こそ記者はいらなくなるか

 そうなると「今度こそ記者はいらなくなるか」という話をしたくなる。ChatGPTやGPT-4が出てきたころにも同じ話題があったが、今度はどうか。これに関しては「まだそこまでは言えないかな」が筆者の感想だ(自分自身の仕事なので、ポジショントークかもしれないが)。

 まず、先ほども話したように調整が不要なわけではない。何度も試すとたまにウソを書くので、ファクトチェックは必須だ。その意味でも人間の目は欠かせない。

 2023年8月まではカバーしているとはいえ、時事性に弱いのも厳しい。ITmedia NEWSはニュース媒体で、ニュースは新しい情報を扱ってなんぼ。Claude 3は少なくともWebからはURLにアクセスできないので、カバーする手段もない。

 最後に、複数のマルチモーダル(文字に限らない視覚や聴覚など)な情報を束ねて、記者独自の切り口で一つの記事にまとめる作業は、まだ任せられない。手前味噌だが、例えば筆者が過去に書いた以下のような記事は、Claude 3でも書けないと思う。

 完全に主観だが、時事性に弱いこともあってAIは人の興味を引くような話題の切り口を発案できないように感じる。それを反映した文章構成も同様だ。ただしアイデアの種を無尽蔵に出せる強みはあるので、使うとすればそこだろう。

 もちろん、独自の切り口を持った記事の執筆もできないことはないかもしれない。とはいえ都度プロンプトを調整したり、入力するデータをAIが食べやすいように成型したりする手間を考えると、やっぱり自分で書いた方が楽だ。つまりコラムや複数人への取材を基にした記事は、まだ人間がやった方が生産性が高い。

 ただ、企業からの発表をもとに記事を書くなら、上述の通りAIと協業できる可能性が十分にある。この作業はAIで効率化して、自分は取材や独自性のある記事の執筆に専念する、という働き方はできそうだ。これなら、記事執筆の生産性は格段に上がる。これまで時間不足で手を出せなかったネタにも着手できるかもしれない。

 つまり、自分の仕事についていえば「仕事をAIに奪われるかもしれない」ではなく「AIに任せられるかもしれない」と感じた。そもそも筆者のような記者・編集者の仕事は記事を書くことではなく、誰にどんな情報やコンテンツを届けるか判断することで、書く作業自体はその手段にすぎない。

 その手間をアウトソースし、本来の仕事に割けるリソースを増やせるのは大歓迎。筆者の感想を例えると、すごく高性能なペンやキーボードを手に入れたような感覚だ。一方で、これは一部のライターにとっては危機かもしれない。例えば、仮に“こたつ記事”しか書けない人がいたら強力なライバルになるだろう。

 となると、専門知識や取材能力がある記者・ライターの価値は相対的に高まるだろうか(筆者もそうありたいものだ)。いずれにせよ、Claude 3はそういう可能性の一端を感じられる程度には実力があった。

すぐに後発が出てきそうではある

 とはいえ、生成AIは技術としてもサービスとしてもまだまだ発展の最中だ。状況がすぐに変わるのは想像に難くない。Claude 3が今後急に使いにくくなる可能性もあるし、GPT-4の後継モデルとうわさされている「GPT-5」はもっと記事執筆に強くなっている可能性だってある。

 そうなると、いずれは独自性の高い記事を任せられるようになるかもしれない。あるいは、その前に既存の広告モデルがAIによって崩壊するかもしれない(そうなったら筆者は大変だが)。そのとき、上記の感想はまたガラッと変わると思うが、ファーストインプレッションとしては前向きな受け止めだ。

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