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“岸田政権のスタートアップ支援”を分かりやすく整理する 「5か年計画」開始から1年4カ月、現状は(2/3 ページ)

» 2024年04月03日 10時00分 公開

スタートアップ創出に向けた人材・ネットワークの構築

  • ストックオプションの環境整備

 会社法制上の措置の見直しや税制適格ストックオプションの制度見直しを通じて、ストックオプションの活用を促進。また、未上場会社の株価算定ルールの策定を行い、スタートアップがストックオプションを導入しやすい環境を整備する。

  • メンターによる支援事業の拡大・横展開

 若手人材の育成と支援プログラムを拡大し、国内外のメンターと連携して起業家教育を強化。IT分野の若手人材の発掘・育成プログラムである「未踏事業」の拡大などが行われている。

  • 海外起業家育成拠点の創設

 若手人材をシリコンバレーなどのイノベーションの拠点に派遣し、グローバルなネットワークを構築。起業家輩出を目指す海外派遣プログラム「J-StarX」などが実施されている。

  • グローバルスタートアップキャンパス構想

 海外トップ大学との連携やディープテック分野の共同研究・投資/融資機能を兼ね備えたキャンパスを創設する。

スタートアップのための資金供給の強化と出口戦略の多様化

  • 中小企業基盤整備機構(中小機構)と産業革新投資機構(JIC)の出資機能強化

 中小機構へは200億円の出資機能の強化を実施。内外VCへの有限責任投資を推進する。JICは、新たに2000億円規模のファンドを立ち上げ。さらにファンド運用期限を2050年まで延長し、出資機能を強化する。それ以外の官民ファンドも含め、公的資金による国内外VCへの有限責任投資の強化を進める。

  • 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)による研究開発型スタートアップへの支援策強化

 補助上限や支援メニューの拡大、海外VCを含む対象VCの拡大を実施。研究開発型スタートアップへの支援策を強化する。さらに、量産化や事業開発の支援等を含めたディープテックスタートアップに対する支援事業を拡充する。

  • 海外進出を促すための出国税等に関する税制上の措置

 スタートアップの海外進出時に経営者自身が海外赴任する際の税制上の措置を検討。スタートアップの海外展開を促進する。

  • スタートアップへの投資を促すための措置

 保有する株式を売却してスタートアップに再投資する場合の優遇税制を活用し、創業者など個人からスタートアップへの資金供給を促進。またエンジェル投資促進のため、エンジェル投資家・スタートアップ間の情報共有やマッチングを行うプラットフォームの普及を図る。

  • 公共調達の促進

 国や国の関係機関が調達する物件、工事、サービスについて、スタートアップからの調達比率を3%以上に拡大することを目指し、スタートアップの政府調達の参画を拡大。

  • 未上場株の取引環境の整備(セカンダリーマーケット整備など)

 スタートアップが未上場のまま成長できるよう、プロ投資家向けの非上場株式の取り扱いを可能とするための金融商品取引法の関係政令を改正。またセカンダリー市場でのオンライン取引の規制緩和なども図る。

オープンイノベーションの推進

  • オープンイノベーション促進税制

 国内の事業会社やCVC(事業会社が自己資金で形成したファンドによるVC)が、オープンイノベーションによる新事業開拓・生産性向上を目的としてスタートアップに出資する場合、取得価額の25%を課税所得から控除する制度。24年度税制改正で適用期限を2年間延長。

  • パーシャルスピンオフ税制・カーブアウト加速支援

 大企業が有する経営資源(人材、技術等)の潜在能力の発揮や大企業発のスタートアップ創出のため、スピンオフを行う企業に持分を一部残す場合についても課税の対象外とする。また事業会社内の優れた技術・人材の流動化によるイノベ−ションを後押しするため、事業会社に蓄積された技術を活用して新たな会社を立ち上げる起業家を対象に、研究開発費の助成や専門家による伴走支援などを行う。

その他の施策

  • J-Startup(スタートアップ育成支援プログラム)

 外部有識者の推薦などに基づき、潜在力のあるスタートアップを選定し、官民連携で集中支援するプログラム。23年に実施した第4次選定からは、関係各省が推薦する有識者とインパクト(気候変動や少子高齢化などの社会・環境課題に効果をもたらす)投資・インパクトスタートアップ分野の有識者を委員に追加し、新たに50社を選定した。

  • インパクトスタートアップに対する総合的な支援

 インパクト投資拡大に向け、産官学金など幅広い関係者が協働・対話を行う場として「インパクトコンソーシアム」を23年11月に設立。国際認証を踏まえ、インパクトスタートアップの日本版の認証の枠組みとして、「J-Startup Impact」を同年10月に新設し、30社を選定した。

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