内海さんによるとこれまでのモデルチェンジで、排煙やニオイ対策などの細かな改良は行っているもの、基本的な仕組みや構造は初代モデルから継承されているという。
「最初にデザインしたのが97年なので、ちょっとレトロすぎて現代のキッチンやンテリアにはなじまないと考え、23年に発売した『コーヒー豆焙煎機 MR-F60A』と合わせたデザインにリニューアルしました。20年以上売り続ける間には、コンビニのコーヒーが始まったり、エスプレッソが流行ったりと、コーヒー市場の変化を見てきました。確かに流行は変わりますが、きちんと焙煎して、きちんとドリップできれるベースがあれば、長く愛されると思っています」(内海さん)
暖房器具メーカーであるダイニチ工業は、安全性と部品の保守などに力を入れており、カフェプロシリーズも20年間メンテナンスを行ってきた。現在は家庭用として販売しているが、もともとは業務用を想定して開発されたこともあり、長期使用に耐える高い品質を備えている点も、長く売れ続けている理由の1つだ。
「社内にも、97年や00年に発売した初代モデルを使っている人がいます。調子が悪くなっても部品をきちんと管理しているので直して使えます。安全性やメンテナンスに対する意識は、他メーカーと比べて非常に高いと思っています。我々のメイン事業である石油暖房製品は、この意識がないと火災につながるという背景もあるでしょう」(内海さん)
さらにダイニチ工業では23年に、23年ぶりとなる新製品として、熱風式を採用した「コーヒー豆焙煎機 MR-F60A」を発売し、同時にブランドロゴも一新した。今回のリニューアルは、ボディカラーをMR-F60Aにあわせて、シリーズの一体感を出していくものだ。
こちらのコーヒー豆焙煎機は3万円台と入手しやすい価格で、メディアが主催する23年末の家電アワードで受賞するなど、高い評価を集めている。そして、今回発売された焙煎機能付きコーヒーメーカーとコーヒー豆焙煎機も、この流れに乗ってさらなる人気を集める可能性がある。
現在、焙煎機能付きコーヒーメーカーとコーヒー豆焙煎機は直販限定での販売だが、家電量販店との商談が折り合えば、店頭販売も考えているそうだ。
この20年、ほとんど販売促進費や広告宣伝費を掛けることなく、販売してきたカフェプロシリーズ。「ブームに左右されずに売れ続けてきた」と内海さんは語る。現在では口コミやコーヒーブームもあり、ゆっくりとではあるが広がりを見せている。
自家焙煎機は18年頃にパナソニックが製品を投入(現在サービスは終了)、その後も多くのメーカーから発売されている。とはいえ、自家焙煎は加熱と品質の担保の難しさや安全性、ニオイや煙対策など、非常に課題が多い。
そんな中で、約20年前に家庭で使える焙煎機能付きコーヒーメーカーや焙煎機を製品化し、安全性やメンテナンス性にこだわりながら長く売り続けてきたダイニチは、まさに先駆者なのだ。
【訂正:2024年5月23日19時43分更新 ※製品型番の一部とダイニチ工業の設立年に誤りがありました。お詫びして訂正いたします】
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