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「生成AI検索」は著作権侵害なのか? 日本新聞協会の“怒りの声明”にみる問題の本質小寺信良のIT大作戦(2/3 ページ)

» 2024年07月29日 09時00分 公開
[小寺信良ITmedia]

「軽微な範囲を超える」とはどういう意味か

 上記で示した、AIの学習に関する著作権法の規定は、30条の4(著作物に表現された思想又は感情の享受を目的としない利用)の話である。一方検索時にサマリーを示すという件は、47条の5(電子計算機による情報処理及びその結果の提供に付随する軽微利用等)の話である。

 Web検索を行うと、見つかったコンテンツのタイトルとそのリンクとともに、本文の一部が抜粋されて表示される。この機能を巡っても著作権侵害ではないかと大もめした時代もあったが、2018年の著作権法改正で、30条の4と47条の5が新規に設定された。

 つまり検索時に中身がちょこっと見えるのは、「軽微な利用」なのでセーフ、ということになったわけである。

 ただこの機能は、ネットで調べものをする者にとってはもろ刃の剣となった。リンクを踏まず抜粋された文章だけ読んでわかったわかったとして引き返す人が多く発生したのである。だがどんな素性のサイトでそれが書かれていたのか、どういう文脈の中でその記述が存在したのかの前後関係を把握することなく、単に「ネットにそういう記述があったのは事実」だけで学生のレポートやら社会人の報告書やらが成立するワケないだろう? というコンセンサスが得られるまで、それほど時間はかからなかった。

 つまりは検索に一部抜粋が表示されたとしても、リンク元の記述を確認しないとダメだ、ということになったわけである。すでに多くの人は、抜粋だけで済むとは考えていないだろう。

 一方でSearch Labs AIは、複数のサイトを参照し、そこから得られた見解をサマリーでまとめて表示してくれる。まだ試験運用中ということもあり、全ての検索で必ず表示されるわけではない。あちこちで言及されている内容ほど、サマリーが出やすいようである。

Search Labs AIによるサマリー(概要)表示

 サマリーが表示されるメリットは、ユーザーによっては複数のサイトを調べ回って自分なりにまとめるという作業が不要になることで、ユーザーの手間と時間を節約できる事だ。またそもそも検索で調べものをするのが苦手な人でも、検索の達人と同じような結果が得られるというメリットもある。

 そのサマリーは、本来ならば複数のサイトを閲覧した結果、人間がそうまとめるべき形として出てくる。大きく間違った結果には今のところ筆者は出会っていないが、新聞協会の主張では「報道機関の記事を不適切に転用・加工し、事実関係に誤りのある回答を生成するケースが見られます」としている。

 AIが生成したサマリーの正誤は、もちろん大きな問題だ。加えてAIが参照するサイトが特定のものに偏らないという補償はなく、意見の多様性が反映されないこともあり得る。この問題はさらに、多くの視点が必要な論考でも、AIが問題をシンプルに矮小化してしまうという別の問題も孕んでいる。

 だが新聞協会に限らずWeb上のコンテンツを広告モデルで運営しているサイト全体が大きな影響を受けるのは、多くの人がそのサマリーで満足してしまい、情報元のサイトを訪れないため広告が回らない、というところである。これは取りも直さず、検索によってサイトの一部が表示される問題の「焼き直し」ともいえる話である。

 新聞協会としては、検索されたサイトの一部が抜粋で表示されるのは、最終的にはサイトを訪れて情報を確認してくれるという「道案内」ということで不承不承納得していた。だがAIによるサマリーは、わざわざサイトを訪れて答えを見ずとも先に答えが分かる「種明かし」だと主張する。種明かしとは上品な言い回しだが、要するに「ネタバレじゃねえか」と言いたいのだろう。

 サマリーを作るというのはAIが得意とするところなわけだが、それが「ネタバレ」につながるのであれば容認すべきではないというのは、多くの人が納得するところではないだろうか。

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