だが……現実は厳しかった。アイデアは大変良かったものの、筆者にとっては使いづらかったのが正直なところだ。もちろん、筆者の体格(181cmで肩幅ガッチリ目)や組み合わせるリュックとの相性もあることは事前に説明しておきたいが、ペルチェ素子ユニットの“でっぱり”に耐えられず、途中で試用をやめてしまった。
リュックスペーサーは、ペルチェ素子ユニットをスペーサーに取り付けると、3cmほど背中側に飛び出す構造になっている。そもそもペルチェ素子は電気を通すと片方は発熱し、もう片方は吸熱する性質を持つ。発熱側をうまく冷却しないと吸熱効率が落ちる(=冷えなくなる)ため、発熱側にヒートシンクやファンを付けて強制的に冷やす必要が出てくる。ユニットは必然と厚くなるし、ファンを付けるなら風を取り込むためのマージン(空きスペース)も必要になってくる。
スペーサーが稼げる空間にも限りがあるので、マージンを確保するために厚いユニットが前に飛び出てしまうのは理解できる。そのおかげで確実に背中にプレートが当たるのも事実だ。勝手に胸を張ってしまうレベルの“圧”なので、猫背を解消したい人には良いアイテムなのかもしれない(?)
飛び出しの影響をモロに受けたのが自転車だった。ユニットは背中の中央に固定されるため、ハンドルを持つ(腕を前に持ってくるので背骨が出てくる)と、浮き出た背骨がユニットに当たる。持ち歩く機材が多くリュック自体も結構な重さになるので、前にかがむほど飛び出たユニットにリュックの重みが集中するのだ。実際にリュックを背負ってスポーツタイプの自転車に乗ってみたところ、このピンポイント攻撃に耐えられず途中でユニットを取り外した……というのが事の顛末だ。
給電はモバイルバッテリーを使う。バッテリー内蔵式と違って、容量に応じて好みのバッテリーが使えるし、複数持ち歩けば容量がなくなっても交換して使い続けられる。ただ、この方式も完璧とは言えず、バッテリーの自動スリープ機能との相性の悪さが垣間見えた。
大半のモバイルバッテリーは、デバイスを取り外したり、電気的にオフな状態になると自動で電源が切れるようになっている。このため、ペルチェ素子ユニットをつなげてすぐに電源を入れれば問題ないものの、しばらく経ってオンにしようとしてもバッテリーが立ち上がらず、リュックから一度取り出してバッテリーの電源を入れ、そのあとペルチェ素子ユニットの電源を入れる羽目になる。メーカー違いで複数のバッテリーを試したがいずれも同じ挙動だったため、「電源入れっぱなし」運用が一番ラクかもしれない。
ペルチェ素子ユニットの冷却性能は結構強力だった一方で、その下にあるファン付きの金属プレートはいまいち効果を感じられなかった。ファンは直接背中に当たるわけではなく金属プレート自体を冷却するもの。位置的に腰付近を冷やすものだったのだろうが、無効化されるぐらい日本が暑すぎるのだろう。ペルチェ素子だけで十分に冷えるし、ファンの音も結構デカかったので基本オフで使っていた。
ものは試しに、ペルチェ素子を取り外してプレートだけでも使ってみた。これが意外と効果てきめんで、ペルチェ素子ならではの「冷え冷え」感はないものの、背中とリュックの間に強制的に作ったスキマのおかげで通気性が良くなり蒸れにくい。よく登山用や自転車用のリュックで最初から隙間が作られているベンチレーションタイプのものがあるが、あれのメリットがよく分かる(実のところ筆者はこの状態で当面使わせてもらった)。
改めてお伝えしておくが、さまざまな種類のリュックに取り付けることを想定した汎用品という性質上、快適かどうかはリュックや装着者との相性にだいぶ依存する。今回は筆者がガッチリ体系+造りが厚めのリュックで使ったため余計に“圧”を感じた可能性もある。こればかりは条件次第なので、筆者が使ってみた場合の話であることをご理解いただきたい。
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