ジョージ・ダイソン著「アナロジア AIの次に来るもの」(早川書房)には、ライプニツの機械式コンピュータの話が出てくる。この18世紀に考案されたコンピュータは、ビー玉が転がる先のゲートが開いているか閉じているかのオン/オフで計算を行うという、機械によるデジタル・コンピュータの試みだった。
ところが、このTamatamagoには、オン/オフを司るゲートは存在しない。そして、結果も2つではなく3つなのだ。最終的に出口を3つに固定しているという意味では、デジタル的ともいえるけれど、その結果を導くためのゲートは存在しないわけで、つまりこれは、アナログコンピュータと呼んでいいのではないかと、6月に東京ビッグサイトで行われたイベント「インテリアライフスタイル」で、Tamatamagoの試作品を見た時に思ったのだった。
「アナロジア」は、5月に翻訳出版され、すぐに増刷が決まり、さらに同月、同じく早川書房から復刊されたトム・スタンデージ著「ヴィクトリア朝時代のインターネット」も大ヒットとなった。AIの先にあるアナログコンピュータの可能性や、コンピュータが無かった時代のインターネットに、今の人々が何かを見ているのが、多分、今という時代で、そこに、このTamatamagoのような試みがコンシューマー向けの製品として出てきたというのが、私にはとても面白く感じた。まず、どういう経緯で、このような製品が生まれたのかが全く分からなかったのだ。
今回の製品を担当したアッシュコンセプトの砂口あやさんは「アッシュコンセプトで、ずっとお世話になっているスペインのデザイナーにジョルディ・ロペス・アギロさんという方がいて、彼の事務所に遊びに行ったんです。その時に見つけたのが、この製品の原型になるものでした。それはアメリカの大学のワークショップで作ったもので、1つの量感をどのように分解したら違う要素が生まれるか、といったテーマで制作したもので、最初からなんとなく卵っぽい形だったんです。この何となく不思議な形のものが、別の機能を持っているというのが面白いねと、私とジョルディさんで話していたのが最初でした」と話す。
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