結果的には、エアガン用のBB弾(0.12g)が、その大きさや重さ、均一性や入手のしやすさなどの点で、最も合っているということになった。
実は私は、試作品をお借りして試用していたのだけど、その時、ボールをなくすのではないかとドキドキしていた。なので、どこででも気軽に入手出来るボールが使われているというのはとてもあり難い。ボールは卵の黄身を意識して、イエローのものが10個付属しているが、これなら足りない人も安心だ。といっても何千個も必要になるわけではないから、少ない数のパッケージを探す方が大変かもしれない。
この製品の凄さは、その仕組みだけではない。実際、樹脂などで、この仕組み部分をただ包んだだけの製品にするという方向もあったと思うけれど、意思決定ツールとして使うには、あまり安っぽい見た目だとありがたみも薄い。また、中の仕組みが見えてしまうのも、科学オモチャとしては楽しいが、実用品としてもオブジェとしても、やや興ざめ。なんといっても、当初から「卵」にするというアイデアがあった。
「卵に見えないとイヤだったんです。内部構造ごと3Dプリンタで作ると、質感が軽過ぎるし、色々試してみましたが、内部構造ごと作るのは難しいということが分かりました。ならば、内部と外部は分けようということで、内部構造をインサートできて、外側の質感も高品質に仕上げられるのはsoilさんしかいないなと思ったんです」と砂口さん。
soilさんというのは、この連載でも取り上げた、世界を少しだけ平和にする猫ボードゲーム「ネゴ」のコマや、珪藻土を使ったバスマットや傘立てなどを作っている、左官の技術を生かしたモノづくりのメーカーで、アッシュコンセプトとの付き合いも深い。
「ボールを入れる穴から内部の構造が見えないようにするとか、水平と垂直を保ったまま、3Dプリンターで作った内部構造を、管の中に石膏を入れずに成形するといったことができるのは、soilさんだからこそなんです」と砂口さん。
実際に使っている型も見せていただいたのだけど、シリコンではないがそれに近い素材で作られた型は、成形後、型を割って中の製品を取りだしている。なので、一つの製品を作るのに、型も必ず作らなければならない。製品自体は、アナログコンピュータといって良いようなものなのに、製造過程はほとんど工芸品だ。白モデルで1万円という、決して安くはない価格も、この工程では仕方ないというべきだろう。
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