さらに、組織づくりについても反省点があったと金谷CEO。人材採用については「漫然と『優秀な人が欲しい』というより、ある理想に対して逆算で考えて全然足りない、自分たちにはできないから助けてほしいというアプローチ。他社が『いかにうちがイケているか』を採用候補者に訴えているときに、僕は『akippaがいかにイケてないか』を懸命に候補者に説明していました」と笑いながら語る。
しかし成長の過程では、権限委譲の難しさをかみしめることもあったという。
「初期の段階では自分が何もかもに関わり、マイクロマネジメントに陥っていました。これは細かいところまで把握できる“手触り感”があっていいんですが、事業はなかなか伸びません。もっと早く権限委譲できればよかった」
金谷CEOが権限移譲を試みたのは19年ごろ。ただ、マイクロマネジメントに陥っていた反省からか、今度はチームを“放置”してしまったという。
これにより、現場はさながら“火事場”に。売り上げのための機能追加を求める営業サイドと、ユーザーのためのアップデートを優先したいエンジニアで意見の対立が発生し、黒字化が近づいていたにもかかわらず、事業面でも組織面でも問題を抱えることとなった。結局、金谷CEOが自ら事態の収拾に当たり、最終的には副社長に権限移譲していく運びになったという。
「書籍にも書いたのですが、プロダクト開発チームは崩壊寸前まで行っていました。きちんとモニタリングしていなかったので、僕の事業に対する解像度も低かった。ただ明らかな火事場が来て、自分が出ていかなければ収まらないと分かったことはよかったかもしれません。一度しっかりチームに入り込んで、その後、小林(取締役副社長COOの小林寛之氏)に権限を委譲していく中では、口出しはしませんがモニタリングは怠らないようにして、問題があったときにはアラートを出すようにしました」
もう1つ、大きな反省点として金谷CEOは「ずっと忙しかったことは大失敗だった」と振り返る。
「コロナ禍のときに考える時間ができて、ミッション、ビジョン、経営戦略の解像度がものすごく上がったんです。やはり考える時間があれば、全く違う次元のことを描けます」
この経験を踏まえて金谷CEOは現在、毎週月曜日を「中長期のことだけを考える日」として確保しているという。
「社員から見える業務をやっていないと『最近社長は何をしているのか分からない』などと言われることもあると思います。しかし、それを恐れていてはいけません。トップダウンの会社では、社員に頑張っている背中を見せることも大事だけど、未来を考えることはもっと大事。後に続く起業家の人たちには、勇気を持って『何やってるのか分かんない』ことをやってほしい」
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