このコーナーでは、2014年から先端テクノロジーの研究を論文単位で記事にしているWebメディア「Seamless」(シームレス)を主宰する山下裕毅氏が執筆。新規性の高い科学論文を山下氏がピックアップし、解説する。
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米コロンビア大学や米ペンシルベニア州立大学などに所属する研究者らが発表した論文「Semi-Dirac fermions in a topological metal」は、物質中で特異な性質を持つ新しい粒子の存在を確認した研究報告である。この粒子は、ある方向に動くときは質量がゼロとなり、別の方向に動くと大きな質量を持つという、直感に反する奇妙な性質を示す。
この特殊な粒子は「Semi-Dirac fermions」と呼ばれ、16年前に理論的に予測されていたが、これまでは人工的に作られた環境でしか観測されていなかった。今回、研究チームはジルコニウム、シリコン、硫黄からなる特殊な半金属「ZrSiS」の中で、この粒子の存在を初めて確認することに成功した。
研究チームは、この粒子を観察するために、半金属を極低温(-268度付近)まで冷却し、17.5テスラという強力な磁場をかけた。
このような条件下で、研究チームは赤外線を用いた精密な測定を行った。半金属に赤外線を照射し、その反射光を詳しく分析したところ、Semi-Dirac fermionsに特有の性質を示す証拠を発見した。特に、磁場の強さを変えたときの粒子の振る舞いが、理論的に予測されていた特徴と完全に一致することを確認した。
Source and Image Credits: Shao, Yinming, et al. “Semi-Dirac Fermions in a Topological Metal.” arXiv preprint arXiv:2311.03735(2023).
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