人工衛星の姿勢制御を司るリアクションホイール(reaction wheel)と呼ばれる機構に不具合が生じ、X軸/Y軸/Z軸を制御する部分のうち1つに電源が入らなくなった。
太陽光パネルを太陽に向けるなどの基本的な姿勢制御はできるものの、姿勢を変える速度が落ちて撮影時の動き、地球に送るデータ量などに影響が出る。この時点で当初構想にあった有料サービスとしての「宇宙撮影」は断念した。
それでもカメラは健在で、人工衛星の基本的な姿勢制御も、ゆっくりではあるが可能だった。このためプロジェクトチームは可能な範囲の撮影方法を模索。8月頃には安定した運用ができそうになってきた。
しかし、ここで再び災難が襲いかかる。3軸のリアクションホイールのうち、2つめも故障してしまった。
プロジェクトチームはその後も検討を続け、12月には「太陽補足モード」でなんとか安定した制御が行える状態にまでこぎつけた。
24年2月、ついに一般の人でも宇宙から見た地球や遠い宇宙の写真を撮影できるサービスの参加者募集を始める。姿勢制御の都合で地上局との通信時間が短く、写真は「1カ月で数十枚」しか送信できない。このため当初は抽選で30組限定とした。
24年5月には、大規模な太陽フレアが発生。EYEの高度が400m下がり、姿勢制御系の機能がリセットされるなどの影響も受けた。しかし幸い大きな問題にはならず、EYEはメキシコ湾上空で美しいオーロラを写真に収めることにも成功した。
運用チームの苦労もあり、その後EYEの姿勢制御は状況が改善する。24年6月に募集した3回目の宇宙撮影体験では、EYEの姿勢を太陽光パネルが太陽を向いた状態から30度以内で任意の方向に変更できるようになった。宇宙撮影体験の参加枠も一挙に100組に拡大した。
24年10月には、最後の「宇宙撮影体験」の参加登録受付を始める。それまでの抽選方式を止め、事前に参加登録を行った人は、期間中に毎日先着順で宇宙撮影をリクエストできる仕組み。この時、運用チームは「撮影体験を安定して提供できるのは11月末までと見込んでいる」としていた。
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